契約価格の破綻は自明だった。
物流会社は内心で危惧していたが、こちらから値上げを申し出るなどあり得ない。
荷主は廉い契約運賃に喜んでいる。
業務契約しているECショップの月間出荷口数が全部で3万件だとして、、、
一件に10円か20円、大型品や遠方への発送なら50円から100円ぐらい乗っけて請求できる。
まことにオイシイではないか。現場の事務員が個配会社からの請求データを荷主別にまとめ、マージンを乗っけた額が記載された請求明細を作成。最終的な確定請求に追加して、管理者の確認と判子だけで済む仕事。
右から左の事務手数料としては悪くない。
廉い運賃を求めた荷主。
低単価の運賃契約を営業の販促費に転じさせ、他社よりもお得もしくは他社同様と謳い、取扱い品では差別化しきれない競争力の脆弱を送料無料や割引クーポンで補うことを強みとし。
そんな荷主の需要に乗じて、月間出荷数のみで破格のタリフを提示してきた物流会社。
ネコと飛脚の両担当に相談風のすがりつきをして、「特値」をおねだり。
薄利だが請求額の50%を超える額だし。請求事務だけのペーパーマージンはありがたい。
荷役・保管料よりも多い、「名目上は売上」になっている運賃立替額。
やめるわけにはいかない。
売上半分以下になるんだもの。
運送屋の主管や支社。
それに連なる営業所やセンター所属の営業活動もする配達員達。
総出荷件数が多い物流会社には、少々廉くしても支社や主管は文句言わない。
1車あたりの積み込み数が多ければ、単価が低くても総額でいける。
出荷総数が多い物流会社を持っていれば上は何も言わないし、評価されることが当り前。
ネコの客をひっくり返したんだもの。
飛脚の客を全量獲ったんだもの。
全員が敗者になった。
惨敗したのはこの期に及んでも運賃差益にしがみついている物流屋で、逆ザヤでヒィヒィいっている。
運賃値上分を転嫁請求するなら契約そのものを見直す。と荷主から告げられ、その上に運送屋からは「半年以内にもう一度再値上げのお願いをすることになる」と追討ちの言葉が。
自業自得と嘲笑を買っても致し方ない。
送料無料を販促費としてきたネットショップがその次。
「送料かかるなら買わない」「送料払ってまで買う気ない」「なんで送料無料じゃないの?」
みたいな購入者層で売上維持。
商品だけでは勝負できないのだから仕方ない。
運送屋の匙加減で会社の根幹が揺らぐような経営。
それは理解しているが、仕入や商品企画なんてやったことないし。
だって二年前まで広告代理店で営業やってたんだから。
前職時代、同業他社が奇異な眼で見る中、運賃を荷主と運送会社の直接契約に切り替えて、請求額、つまり名目売上が2割から5割下がろうとも方針貫徹したことが、今では「英断だった」と評価されている。
今褒めるのは誰でもできるわ!
当時どんだけ批判されたことか。
本当のハナシをすれば、英断でもなんでもなかったのだ。
きっかけは、、、ナイショにしておこう。
何の参考にもならない。
しかし、運賃の教訓をもう一度活かさねばならない事態が目前に迫っていると確信している。
それは何か?
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永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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