運賃については何年か前に見切りをつけた。
その「見切り」とは、抵抗せずに流れのまま受け容れるという意だ。
ここでは個配料金のハナシに絞って記したい。
もはやひと昔前のことになってしまったが、
「ナントカ急便の担当者が値上げを言ってきた」
と前職時代に営業部の部下から相談を受けた。
そのやりとりが、数ヵ月後の運賃立替請求からの撤退に及ぶのだった。
当時、物流業界ではほとんどの会社が ‘ 運賃立替払い ’ を当然のように行っていた。
私も「そんなもの」とあまり疑うことなくやり過ごしていたわけだが、前月の売上と利益の確定がでる月初の役員会では「運賃別で○○%の利益率」という言葉が飛び交う。
ん? 単純に売上粗利と営業利益ではアカンのかいな?
売上に二種類あるんか?なんじゃそりゃ。
てな具合に、常々強い違和感を抱えながら聴いていた。
今から10数年前、ネコも飛脚も60や80サイズぐらいの荷物なら500円ぐらいが法人大口優遇のアタリマエ単価だった。
それが両社のシェア競争の過熱で、タリフ(配送契約料金表)の潜りあいが常態化し、ついには250円から300円あたりまで下落してしまった。
おりしもEC、俗に言うネットショップの台頭もあいまって、両者は競って個配料金を下げる営業を強化した。利益率云々よりシェア獲得を優先した。
当時のEC利用者のボリューム層は20代前半から30代半ば。
購入品はアパレルや雑貨が圧倒的多数で、生活必需品を含む買回り品や消費財を多層年代が購入するのはアマゾンの台頭が顕著になったあとの傾向だ。
当時の不在率は今にもましてえげつない状況だったと聞く。
配送情報の双方向共有システムが無かったからである。最多購入層は学生やフリーターやOL。
そりゃ日中不在だろう。
帰宅時に不在票があったとしても、夜中に再配達の手続きはできないしする気もない。
なにより次の受け取り日時を即決できない。決めても約束事としての意識がない。
「受け取れなくてもまた電話すればいいや」ぐらいの感覚。
たとえ保管期間が過ぎて受け取れなくても、また別の店で買えばいい。似たような品物を売っているネットショップは他にもある。
個配業者のセンターに滞留する再配待ちの荷物。
仕方ないのでドライバーは毎度持ち出してはピンポンするが、やはり今日もいない。
また不在票を投函。
赤字になるに決まってる。
配達先は東京都世田谷区。発送元は福岡県福岡市。
1100km運んで、車と人でぐちゃぐちゃの世田谷で2回目の再配達。
しかもまた不在。
「送料無料」の裏側で、発送主である販売者の元払金額は280円。
1100kmの過酷な廉価運送は個人経営から中堅どころに至るまでの数多ある傭車。
破格の請負価格で夜間料金の高速道路を10t車で走る。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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