またもや倉庫の稼働時間のハナシであります。今まで何度も書いているので、もはや出涸らし感が強いのは承知しているが、まだ味も香りもしっかりしているはず。
世の中の流れを観察していると、どう考えても「労働時間短縮」はなるべくしてなるハナシだとしか思えない。なぜなら今後は国内の仕事量が減るからだ。
俗にいう物流2024年問題とかいう劇場型のコワイコワイ噺はさておき、物流業界で働く人々の総労働時間は今以上に減ってゆくのだろう…は誰の眼にも瞭かだと思う。日本国内では結構なモンダイとしてネガティブに報じられることが多いが、物流先進国とされる欧州諸国では日本の「働き方改革」よりもさらに切りつめていることはあまり報じられない。
ドイツやオランダに代表される物流老成国では、雇用形態の正規・非正規を問わず、一日6時間もしくは5時間労働は特段珍しいことではない。つまり分業化を前提とした時間調整型の仕組が当たり前のように運用されているということだ。
ついでに書いておくと、正規・非正規の枠組自体が徐々に形骸化しつつあり、遠からず消失してしまいそうなのだとか。管理職と一般社員の権限や待遇の格差は減じつつあると聞くし、事業者によっては役職の値打ち自体が低いようだ。
かといって、現場の機能不全や雇用不安や先細りへの危惧を憂う声などが社会問題として常態化しているという気配はない――もちろんいつの時代でもどこの国でもどんな会社でも、制度や経営や組織、勤務評価や報酬に不満を抱くのは労働者の常であり性であり権利なのだから、「気配はない」と書きつつも、その点は引算してお読みいただきたい。
ついでのついでに書いておく。
このたびの「物流2024年問題」などは典型だが、日本の数多いメディアにありがちな「悲観論者は賢そうに見える」という安直な思い込みは即座に改めてほしい。
悲観と否定ばかりでは何も生まれないことなど自明。「で、どうするのだ?」を問われたとき、善後策や代案を用意できていないなら、後ろに下がって黙しておくべきだろう。
やたら湧いて出てくる「問題提起屋」を全否定はしないが、あんまり偉そうにすんなよ。
―――と誰かを怒声まじりに詰め倒しているヘンな夢を昨夜みた。
ハナシを戻す。
運送屋の労務規制に倣い、倉庫屋も似たような運用を始めているが、性根も思考も旧態依然のまま下手な化粧でごまかして急場をしのぐようなお粗末内容であることが多い。
当事者たちも「イマイチだなぁ」と自覚しているわけだが、前述のとおり上策が打てないまま悶々と焦れている、もしくはまだ何もしていないくせに諦めているのが実態だ。
大都市圏と過疎地域では労働力の需給バランスが異なるのは当然なので、拠点所在地別に労働力確保の方法論があって然りだと思う。
たとえば大都市圏ながらも人口漸減傾向である小都市ならば、倉庫の稼働時間は週に5日×15時間前後ぐらいがよいのではないかと思う。(土日祝を休業日とする必要はない)
この枠で一人工を何時間とするかは各事業者が決めればよいし、そこが定まれば何人工の業務なのかが試算できる。
人工が定まれば、働き手の実数と各自の希望や事情から実働時間を割り当てする。その際にはフレックスにしてコアタイムを設けたり、5~8時間の間でローテーション調整、さらには早番や遅番の固定者を軸に業務配分を時間帯別に振り分け、などの手当てが可能になる。
ちなみに検証済みの実例があるので、有効性については大いにお勧めできると断言する。
ただし働く側が住まうエリアの人口動態や共稼ぎ率、託児所や学童保育所などの数値が異なるはずだから、一概に「どこのどの事業者にとっても好適」とは言えない。
6時から20時の間に縦並びで3人が働くとするなら、
(A)06:00~12:00 (B)11:00~16:00 (C)12:00~20:00
のようなイメージで作業枠の稼働時間を縦に設けると、求人募集で有利に働くことが多い。
それ以上に業務の消化効率が従前(09:00~17:00の枠内でやりくり)よりも向上することは有益だった。必然的に管理者側も早番・遅番などの二部制での対応となる。
これからは週に5日の稼働ではなく、4~4.5日、つまり月に16~20日間ぐらいの稼働が好ましくなるはずと推測している。その代わり一日を縦に長く使うことにより効率向上で業務消化能力を維持できるよう努めねばならないわけだが、実はたいして難しいことではない。
既存人員への労働時間帯の希望や受容できる幅のヒアリングを行い、時間枠の設定と業務波動の整合性を図るだけで、ことの八分は成ったも同然と考えてよい。
生産性の向上は「放っておいても」とまではいかずとも、枠設定と枠内での必達すべき明確な作業指示さえ掲示しておけば、おのずと結果はついてくる。もちろんあまり過酷なノルマを課すのは本末転倒となってしまうので厳禁。
「きつすぎずゆるくなくいいかげん」こそが目指すべきところだ。
それが一番難しい?
一般職やパート職よりも高い給料もらってエラソーにしているんだから、皆が「うーん」と唸ってしまうような難しいことを捌けてあたりまえではないでしょうか。
責任者殿。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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