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老イテマスマス…「超年」へのみち

カテゴリ: 予測

今さらながらだが、超高齢化時代に突入して久しい。
あまりにも一般化してしまっているせいか、各メディアをはじめ人々の日常会話でも普通名詞としてすっかりなじんでいる。

それならいっそのこと、幼年・少年・青年・壮年(中年)・老年(高年)という、たいしてエラクなりそうもない出世魚的表現はやめにして、子供→若造→大人→超年という明快で端的なのはいかがだろう。
超年:単なるジジババにとどまらず、バリバリ働き続け、枯れたり控えめにふるまうことを是とせず、年金依存度の低い高齢者たち――というのを新語辞典に載せて欲しい。
「いやぁ、単なるオトナで終わらず、60歳以降は皆から認められるチョウネンになりたいもんだ」などのように壮年世代が望んでくれたら嬉しい限りである。

古い対談集に「老イテマスマス耄碌(もうろく)」という名本がある。その中でヨシユキセンセイが山口瞳氏にあれこれと疑問や提案を投げかけ、さらにはいかに自分ほうが耄碌しているかを自慢話のごとく競うように挙げるのだが、それが絶妙で面白いことこの上ないのだ。病気自慢や衰えの数の優勢を断固として相手に譲らぬ偏屈オジサンふたりの会話の面白さは一読に値するのではないかと思う次第だ。
そのハナシに倣って、老いてますます耄碌しつつも、しっかり元気でもあり、仕事となれば丁々発止のやり取りはもちろんのこと、昔取った杵柄を今も使い倒している――なんていうチョウネン集団がいる物流倉庫現場があったら、、、オモロイのではなかろうか。

「荷受は庫内作業の肝となる場所。したがって40にもならない若造たちにはまさに“荷が重い”はずだ」
のような渋いセリフを放つ入荷パートのリーダー。来月の誕生日で70歳になる。
「ピッキングの神髄は体力頼りのスピードではなく無駄のない一筆書きさながらの流麗な動き。小娘たちのように小走りしたり、バタバタと右往左往したりは不効率と不正確のもと」
とにこやかに語るオババ様は御年74歳。もちろん全作業工程をこなせる完全多能工であり、WMSの操作は庫内でも上級者の部類に属する。

このようなスタッフを高齢者や老人と呼ぶのは違和感だらけの後味しか残らない。
単なる高年式をもって、衰えや劣化と結びつけるステレオタイプな愚は頭の中から排除しなけれならぬ。
名は体を表すのだとしたら、敬うべきジジババたちの総称は「超年」が相応しいのではないかと思う次第だ。
年齢を超える存在として敬意と憧憬の的となる人々。
やや過剰演出気味ではあるが、これぐらいの表現は許容範囲ではなかろうか。

自動化・機械化・省人化という「行く末3点セット」の隙間や日陰で、人間の手や脚が必要とされる業務は数多く存える。
若者たちに物流業界を志してもらえるよう、業界あげての労働環境の整備や業務内容の魅力ややりがいの正確な広報は今以上の努力が求めらるはずだ。しかし人口構成を眺めれば、最大比率を誇る60歳以上の人間を労働力として活用しない選択は苦しい。
既成概念は捨てて、まずは試用期間を設けての採用に踏み切ってはいかがだろうか。
すでに全国各地で多くの物流企業が高齢者雇用の実施と成果を報じている。
間違いなくその中には「超年」と呼ぶにふさわしい方々が存在するはずだ。

しかしながら、、、問題は自分自身が超年グループに入れてもらえるかどうかだ。
「検討しましたが、今回は見送りとさせていただきます」
「まことに遺憾ながら、ご縁がなかったということで」
「残念な結果となりましたが、これに懲りることなく、、、」
などのことわり文句が次々に浮かぶ。

こんな駄文を書いている場合ではない。
遅ればせながらも、超年へのみちを歩むための傾向と対策に取り組まねばならない。
軽い気持ちで書き始めたが、ふと我に返れば危機感しか感じない今なのだ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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