物流よもやま話 Blog

雇用維持には業務内製化を

カテゴリ: 予測

何から何まで値上一色と感じるばかりだが、全部が全部コストアップによるものなのか?
、、、という疑いを抱いてしまうワタクシである。
「ん?こんなものまで、、、あからさまな便乗値上げとしか思えん」と眉をひそめるモノ多しだ。アコギが過ぎると痛い目に遭うのが世の常――という自業自得や因果応報を戒める昔話を読んだことがない連中が多いらしい。

などと不快なハナシを脳裏に浮かべたのは、企業人たちの定年延長や再雇用にまつわる所得減の事例を耳にする機会が頻繁になっているからだった。
つまり所得が大幅に減るのに物価は高止まりどころかまだ上昇すること必定。
新卒者を筆頭に若手社員の年収は上がっているが、企業全体を見渡せば平均所得が比例しているとは限らない。かねてよりの持論でもあるが、最低賃金や初任給は上がりつつも、中堅以上の平均所得は下がる傾向にあるわが国。つまるところエネルギーをはじめとする物価上昇によって実質所得は減少の一途という世帯が増加しているのは統計を読むまでもない。
残念ながらわが業界はその典型とみなしてよいだろう。

しかしながら減収の当事者たる本人としては
「これでは年功や経験をまったく斟酌していないではないか」
と憤慨無念を禁じえない大幅な報酬減額の提示を受けたとしても、不本意を耐え忍んでそのまま勤務継続しておく方がよい事例をたくさん見聞きしている。
縁もゆかりもない他社で再就職して報われたり納得できるのはほんの一握りの人々でしかなく、多くの再就職者は「こんなはずではなかった」という下の句で後悔の念を結ぶ。

「自分自身が登場する企業物語での役割を終えたのだから、残り時間は現役世代のサポート業務を粛々とこなすのが老兵の務め」という切り替えが必要だと述べるベテランもいる。
まことに潔く立派であると感じてやまないのはワタクシだけではなく、その企業の現役社員も同じであろうと思う。

なので掲題のとおり、企業は既存の外注業務のうち、内製化できるものは少しづつ切り替えてゆくべきである。外注費を人件費に振り替えるための体制づくりを急いでいただきたいというのが個人的願望であるが、おそらくきっと競争力や経費制御力の一助となるはず、とも考えてもいる。
年金依存では老後が心もとないというのが多数派であるなら、不安を埋め合わせる方策を労使双方で考え準備しておく必要がある。
キャッシュアウトしている項目をあたらめてみれば、内製可能な業務が必ずある。私の関与先では物流拠点の整備や清掃および社内便の運送業務を定年退職者に委ねる動きを数年前から始めたのだが、今や「それがあたりまえ」となりつつある。
もちろん「なんで自分がそんな仕事しなきゃならんのだ」と反発する定年予定者も少なくないと聞くが、「無理強いするハナシでもないので、拒んだり不満を吐く者は対象から外すだけ」というのが会社のスタンスのようだ。

被扶養者の収入の有無や多寡によって「どのパターンが家計収支と手取り歩留まりの組み合わせとして最善なのか」のシミュレーションも盛んだ。
所得税制や社会保障費負担の改変が予定されている昨今、今まで労働時間調整によって得ていた被扶養の利より、総所得を増やすことの必要性が勝り始めている。
少しでも多く可処分所得を確保しようとするなら、最善は配偶者の被扶養要件維持ではなく、求める収入に至るための労働時間で手取り総額を増やすことになりそうだ。
関連する情報はWEB検索すれば山ほど見つかるので、各自が自身の暮らしや状況に見合う情報を入手して考えていただきたい。ちなみに得策や抜け道の類はないので、大きな提灯に美辞麗句が記されているような筋の悪い情報は無視するほうがよい。

育児や介護などによる制限のある方々にとっては厳しい世相となりつつあることも重々承知している。物流業界ができることは働ける時間帯と時間長の弾力化を最大限許容することであるが、そのためには作業の標準化や属人性の最少化を地道に行い続けるしかないのだと思う。

この手のハナシを悲観的に考える必要はない。
この先15年弱で約1000万人の労働力が消失するというのがわが国の現状。
働き手の数が減る国では、安直な機械化や自動化にすがる前に「働ける状態なのに働いていない人」の数を減らすことが、官民協業ですぐに取り掛かれる方策のひとつである。

しかも社内にその候補者がいるならば、雇用確保の一端を内製化できる。
各社が「うちはこうやって○○業務を内製化している」などの情報を開示すれば、その拡がりにいっそう拍車がかかりそうだ。
横の連携で叶う事案もいくつか想像できる。

ちょっと楽しいハナシではないだろうか。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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