今日から東京オリンピックが始まる。
個人的にはふたつの競技の観戦が夢と化してしまったことがとても残念だが、そう決まったのならばいたし方ないと納得している。
梅雨明けとともにやってきた酷暑の毎日ゆえ、空調の効いた室内で楽しむのがいいのかもしれない、、、などと頷きつつ、放送スケジュールの下見に余念ない今なのだ。
もはや言っても詮無きことなのだが、当選していた観戦チケットのひとつはラグビーの決勝だった。会場は調布の東京スタジアムで、最寄り駅は京王線の飛田給。
奇しくも縁がある場所で、これも何かの巡り合わせと内心で感嘆しつつ喜んでいた。
読者諸氏の記憶にも新しい2019年のワールドカップ以来、国内のラグビー人気は高まっていることもあって、7人制とはいえオリンピックのラグビー決勝戦を生で観戦できる幸運に感謝していた。しかも会場は社会人として踏みだした当時の社宅があった場所の最寄り。気持が高ぶるのも無理ないところだった。
ついでに記せば、私は中学時代にラグビー部所属。家庭の事情で転校していなければ、間違いなく高校・大学とラグビーを続けていただろう。
などという来し方の記憶などもあいまって、2年越しの開催を心待ちにしていた。
しかしながら疫災に見舞われた世界中の現状を見聞きすれば、無観客の判断もやむを得ないことは十分に理解できる。
そもそもの願いは五輪云々以前に、1日も早くこの非常事態を脱して普通の暮らしが戻ることなのだ。確かな暮らしがあってのスポーツや文化行事であり、人の営みの足下が揺らいている状況では、誰も楽しんだり感動したりする余力がないことはあきらかだ。
あえて書くまでもないが、まともな物流屋なら異口同音に発していたとおり、物流関連の混乱は想定よりはるかに少ないどころか、皆無に近くなるだろう。事前にたいそうなかけ声をあげての物流機能維持コールは無用となった。
五輪特例による4連休が招いたのは行楽地の混雑とそこに向かう高速道路の長い渋滞や空港や駅の混雑。都心の交通規制による会場付近やう回路への集中流入による局部的渋滞はあれど、生活物資にかかわる物流に大きな支障は出ないらしい。そもそもの物流遅滞の具体的な根拠とは誰がどこで掲げていたのかが不明だ。
もうひとつ指摘しておきたいのは、在宅率が上がっても、たくさん物を買ったり気前よく出前を何度も頼んだりできるような消費動向にはほど遠いという点だ。オリンピックをテレビで視聴する人が当初の見込みよりも増加することによる在宅率アップ→個配物の増加→交通規制が相乗しての個配便の遅延――という絵図は端から無理があったと重ねて書いておく。
さらなる因子として、多種多彩なメディアとデバイスによって、場所と時間に縛られることなく放送や配信が視聴可能な現代では、テレビによる生放送の独占や限定は建前上でしかなくなっていることも大きい。結果として誰もが在宅して家庭内消費に傾倒するという連鎖が生まれにくいといえる。
何かと紆余曲折の多かった五輪開催までの時間と道程は、開催を心待ちにしていた国民の期待値や熱量を減じさせたし、希少性や特別なモノという幻想から覚めさせるには十二分なお粗末さも露呈して閉口ものだった。
従前の予想以上に録画やダイジェストでの結果確認で済ます比率が高くなることは必至だと思っている。興味もあるし否定的ではないが、お祭り騒ぎや諸事差し置いての五輪観戦傾倒とはならず、一定の距離を置いての付かず離れずオリンピック期間の過ごし方、という層が厚いのではないかと勝手に仮想している。
したがって、消費関連の物流増加には至らず、従来通りの堅調なEC需要による総物流量のまま推移するのではないか。あえて付け加えるなら、従来の大形連休に似た消費動向となるような気がするし、行楽予算の一部が在宅時の飲食をはじめとする諸消費に振り替わるぐらいしか想定できない。
会社や取引先からオリンピックを自宅観戦するための特別手当でも支給されるならハナシは変わってくるかもしれぬが、ここに至るまでそのような結構なお達しは聞いたことがない。
私も世間様同様に、いつもどおりの暮らしのまま、テレビ番組表を見回してはアスリートたちの活躍を楽しむ毎日を過ごすのだろう。
いまや危険ともいえる熱暑の日本列島。
省エネと自動機能の目覚しい進化を遂げているエアコンをフル稼働しつつ、大型化して低価格化する大画面テレビで東京オリンピックを楽しむ。
微妙な後味の観戦になりそうだが、それもまたよしである。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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