配送の問題を書くたびになんとなく気分が重くなる。
増税や憲法改正問題と同じように、文句を言おうが反論や批判の記事を書こうが、結局は抗いようがない要素があまりにも多いからだろう。
国内物流は個配比率が上昇し続けている。ゆえにその市場の効率化のために、IT技術などをふんだんに活用した仕組の開発は進む。
現在当たり前のように存在する、掲題の「着払い」「後払い」「受取拒否」も近い将来にはなくなってしまうだろう。「代引き」についてはもはや説明するまでもない。
正確には「なくなる」のではなく「形を変える」ということだ。
理由は単純明快。
「コストが大きい上に、対面効率が不透明でモラルリスクが高い」
からだ。
決済方法、与信管理、決済確定後配送、再配達・返品コスト負担、受取場所・受取設備。
こんな言葉にまつわる仕組やサービスが次々に出現するに違いない。
ざっくりとした乱暴な説明をすれば、個人情報がガラス張りになるからだ。
理由については、その分野の素人同然の拙文などではなく、数多ある丁寧で的確な経済記事でご確認いただきたい。
「課税よりも収税」を旨とする現状政策が打ち出されて以来、取りこぼし防止のために国民に背番号が付された。
その情報の商業向け開示はあり得ない、、、と信じるほど国民は能天気ではない。
金融を中心とする既存の与信情報データベースは、その全容を知るものはいないまでも業種業態によっては必要な情報を得ることが可能になっている。
更に進んで精度や管理手法が熟し、利用目的が細分化・多様化してゆくと、現状の与信調査の段取りが省略され、いきなり購入時に選別されるようになるかもしれない。
「今もそうではないか」というご意見もあろうが、ここで述べようとしている内容は更にえげつない。
購買行動と同時、もしくはその前に「あなたは買えます」「あなたは買えません」が明示されるようになる可能性が高い。
加えて「購入与信」と同時に「配送与信」の選別結果が出てくる。「出てくる」といっても、結果のみが表示されるだけで、その理由は一定の手続きを経なければ知ることができない。
俗にいう「ユーザー・ヒストリー」、つまり購買及び配送履歴の評価が暗黙に作用するということだ。
事業体それぞれにではない。登録業者の参加するネットワーク上で共有管理・利用される。
物流用語でいう「名寄せ」と同じ情報検索が購買の段階で行われる。
新規登録できないショッピングサイトがあったり、登録済みなのに「あなたは本サイトのサービスをご利用できなくなりました」みたいな告知が突然出る。
ショッピングサイトだけではない。個配業者のメンバー登録(現状は追跡や情報変更が主たる利用方法)も「新規登録不可」「登録抹消」のような処置も十分考えられる。
各種EC関連サイトの情報ネットワークと連動しているので、その加入全社のサービスは一定期間か永久にかは別として、まったく受けられなくなる。
これぐらいのことは当たり前に起こりうると考えている。
本当はもっと書きたいのだが、最前線での現象についての記述だと横に拡がりすぎる。
中途半端だが、今回はここでやめておく。
来月以降に掲載する別記事では根本的な事象と仕組の変遷などを記したい。
物流リアル「 個配便の今後 」で回答したとおり、私見ではあるが綴ってみたい。
呉越同舟を拒否できないデファクトスタンダード到来の予感。
ただの夢想や妄想に終わるかもしれないが。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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