最近「宅配の個人事業主増加」のような内容の記事をよく目にするようになった。
多産多死の黎明期が終われば新陳代謝を繰り返しながらいずれは組織化から寡占化に。
なんていうことを漠然と考えながら読んでいる。
「最終配達場面でのプレーヤーには既存大手3社に加えて新たな顔ぶれが居並ぶ」
そんな未来を確信している。
しかしながら、低コストと長時間労働ありきでの請負業務を専らとする個人事業主、もしくはガリバーたちの単なる廉価版でしかない後発運送業者、には分が悪いのではないかとも考えている。価格訴求の行く末はもはや結論が出ているからだ。
廉さはいつの時にも消費者にとって魅力的だが、破綻するまでブレーキを踏まないチキンレースに巻き込まれて被害や不利益をこうむるのも同じ人々だ。
事業者や業界団体、監督官庁はそんな愚の繰り返しを避けなければならない。
配達の個人事業主増加や新興勢力の市場参加がどこまで進展するのか。その結果が明らかになるにはまだ少し時間がかかるだろう。
軽貨物便やバイク便の過去と現在を検証するまでもなく、負担者側のコスト意識と信頼度を安定させるには相当の努力と実績が必要なことはあきらかだ。
主流のわきで細々と、にはなってほしくないと願う。
そのためにもサービスを適用する場所や相手については綿密な選定とひねりの利いた作戦でアプローチしてもらいたいのだが、現在参入検討中もしくは就業中の各社や各人はいかがお考えなのだろう。
コスト抑制のためには配達効率が不可欠要素であり、それは市場参加者の誰もが承知していることだ。しかし人口密集地である都市特化型配達ばかりに活路を絞り込む安直さは、参入者過多の過当競争へと向かういつか来た道でしかない。
「選択と集中」を掲げて群雄割拠の戦場へ切り込んだはいいが、稼ぎやすさの歩留まりに従って戦う場所を絞り込んだつもりが、結果的には自ら選んだ市場から退場せざるを得なくなる。
都市部で繰り返されてきた流通や物流のそんな過去を今さら記述する必要はないだろう。
同じ轍を踏まぬためにも、新規参入組は「戸」へのこだわりを捨て、「個」のみを特化要素として配達機能のサービス化を練るべきではないだろうか。
その拡がりと充実の先には、個別受領ながらも個別配達ではないという「孤」を回避しながら「個」を保つ機能の定着が期待できる。
さらには、地域や地区という生活基盤の機能維持に貢献できる可能性までをも内在している。
敢えて、というより「今だからこそ」の、人口過疎地や人口漸減傾向の地方都市にブルーオーシャンを見出すツワモノが現れないかと期待してやまない。
既掲載にも数稿あるとおり、地方自治体や流通や福祉関連の企業と提携したり共同事業化したりのアライアンスが有望だと考えているからだ。
頻度や価格や時間帯、労働力の慢性的な不足と確保・維持に追われる都心部ではなく、雇用の創出や地域コミュニティの活性化にも大きく貢献できる地方部でのオンリーワンを目指す生き方を選ぶ事業者があってもよいのではないだろうか。シェアや売上額の算盤数字では答えが出せそうもない「かけがえないサービス」という価値が生まれるかもしれない。
自社の存在理由と意義を実感し、全身全霊で取り組む事業者の出現を切に願う。
「個配」の多様化は進む一方で、従事者たちの属性も同じく多彩になっている。
特に目立つのは個人事業主の増加だ。
組織内のプロとフリーランスのプロ。配達の職人とも呼べる頼もしい面々。
それぞれに負うものは異なっても、市場での存在をかけていることに違いはない。
不況による転業や就職難によるネガティブな自営化ばかりではなく、配達のプロフェッショナルとして身を立てる能動的な参入者が増加していることは嬉しい限りだ。
人材の業務能力・品質の追求に優先して労働力の必要総量確保に追われ続けた業界に、異業種からの多種多様な経歴や能力を有する人材が流入すれば大きな刺激になる。中にはめきめきと頭角を現すツワモノ登場にも大いに期待できそうだし、そうなることを願う。
いまや受領者意識としては急速に希薄化しつつある「はやく・やすく」への適度な距離を保ちながら、それ以外の「デリバリー・バリュー:配達価値」を個性や独自サービスとして掲げる「新参者」たちの躍進を願う。
貨客混載をはじめとする事業者免許の要件緩和・登録手続き簡易化や助成の充実など、国交省の動きを待つだけではなく、自治体からも独自案を作成の上、国に認可提案すべきだ。住民の生活インフラとして、管内の物流サービスの充実を図ることに迷いや受動は無用である。
大資本の企業サービスを管内に誘致することは大いに意義がある行政活動だが、他力本願は時間や労力の予測が相手次第になりがちだ。その一方で地域サービスを地域住民による地産地消的な手当てでまかなうことは、計画とその内容についての大部分を自らがコントロールできるだけでなく、雇用や経済活動に大きく寄与する手段としても有効だ。
もちろんだが、生協やネットスーパーなどの運営者と共に自治体事業としての「生活配送・日用配送」を独自に構築することも選択肢のひとつだ。
そこに該当地域在住の「配達職人」が関与できればなおよいだろう。
特定のかたちにこだわる必要はまったくないので、各自治体なりの創意工夫をもって手当すればよいのではと思う。(宣伝:弊社のサポートはとても有効)
戸配は減少の一途。
しかしながら個配数は続伸基調を堅持。
そんな世相をどう捉えるかが、事業戦略の起点となるはずだ。
増える高齢者と減る総人口。
増える人口過疎地と減る自治体歳入。
増える公租公課と減る可処分所得。
こんな言葉を書き出してみたが、「どうするのか」はそれぞれに考えるところありだろう。
私なりの「こうすればいいのでは」は過去記事と今後の掲載をご覧いただきたい。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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