物流よもやま話 Blog

必ずできる!「企業独自の物流設計」

カテゴリ: 経営

業態という言葉を無意識に口に出してしまう。
しかし物流の業務設計や実務やOJTではまったく意識しなくなっている。
玄人ならアタリマエのことだが。

物流の根幹にある「理由」は消費に他ならない。
消費動向が全てを決定する。

売れると信じるから造る。だから倉庫に入荷する。
売れると信じるから置く。だから店舗に出荷した。

全ての場面で物流が存在する。
無ければ原材料の調達も保管もできない。
製品の保管・流通もできない。
経済活動における血液のようなもの、とは使い古された言葉だが、事実そのとおり。
血が流れなければ死に至るし、流れが悪くなれば病気になる。企業も同じだと思う。
だから定期的に検査するし、異常なしで終わることを祈る。
検査すらしていなければ、治癒が難しい状況になってから自覚症状が出ることもある。
もっと早く判っていれば、、、ということは多い。

かつては業種業態別に物流が存在した。
原材料調達から最終ユーザーまでの物流総コストを算出してみれば、今ではあり得ない比率の額が価格転嫁されてきたことがわかるだろう。
日本経済が成長の途にあった頃の生産や物流は、真面目にやっていれば何とかなった。
当時の現場の方々を下に見ているのではない。
今や当たり前のパソコンや種々多様な業務を支える利器類が皆無の時代。
改善も工夫も努力も今以上にあったことは、年長者から聞く話で容易に想像できる。
現場台帳、手繰り表、カンバン、指図一覧、補充札…………
当時の物流現場の管理者や現場担当者のスキルは相当なものだったに違いない。そして何よりも現場に対する自身の誇りを強烈に持っていたと感じる。
「俺の現場」というこだわりと美学のようなものがあったのだと思う。

「何とかなった」のは労働の現場ではなく、会社そのものなのだ。
大きなミスがなければ、事業は拡大し、次々に新しい価値や仕組が生み出された。
そしてとにもかくにも儲かった。
物流現場はそれに対応するべく昼夜を問わず稼動したと聞く。

今は全く逆だ。
国内では消費の拡大に伴う物流業務の伸張などありえない。
現状の中でいかに工夫し、効率的な運営をするかが肝要。
製造業や小売業がSPA化し、中間流通は存在価値が問われ、消滅か業態変更を迫られている。
いずれの場合も物流が変化対応しなければならない。
そのうえ、変化以前に現場の総数が減る。
「製造→中間流通→小売」という商流が、「製造→直接販売」のようになるのだから、二本在った「→」にあたる物流は一つ消えてしまう。

ではどうすればよいのか?
業態に応じた物流改革など不要と断言する。
そんな大げさなものではない。
ちょっと足し引きしたり、変えたりするだけで十分間に合う。

かつての物流業務は業態に合わせて区分されていた。
それは物流業界内の棲み分けでもあった。
業態どころか業界別も珍しくなく、異業種・異業態を選好みせずにせっせとこなすのは、大手の総合物流企業か営業力やコネの無い中小零細物流だった。
中堅どころの優良倉庫には「大旦那」がいて、大旦那には「自社倉庫という正妻」がいた。
正妻は絶対的立場だが、金遣いが荒くワガママで旦那の言うことを全部はきいてくれない。
一方で、正妻に比してはるかに少ないお手当で至れり尽くせりの外部倉庫は気が置けなくてよいし、大旦那が正妻には言えない愚痴や望みを丁寧に汲み取って応じる。
旦那のご機嫌を損ねぬように日参・平身低頭し、ゴルフや食事やお酒の席を欠かさず用意していれば、毎年がつつがなく終わった。なぜなら大旦那は日本経済の伸びとともに大きくなり続け、それに囲われている物流屋をはじめとする協力会社のお手当ても増え続けたからだ。
目先の利く者は、旦那からもらったお手当てを無駄遣いせず、旦那以外にもいい人を見つけるべく、他の建屋と調度や料理を用意して、「次」を画策した。

時代が変わり、大旦那が病や事故に見舞われ世代交代となった時、それまでの一蓮托生組にも大きな差が出た。
先を考えていた者は、早々に大旦那とのことをよき想い出に変え、後付け甚だしい厚顔で信用や実績の裏付けに利用し、新しい今日と未来を築き始めた。
一方は旦那とともに、終わりを迎えた。
それぞれの在り方は、優劣の及ぶところではない。
50年以上の社歴がある独立系もしくはかつてそうであった倉庫会社は、ほぼ上記の「次」を見据えたパターンに当てはまる。望んだか否かは別にして。
いわゆる “ 海千山千 ” というやつだ。
したたかでしなやかで機敏でなければ今は無かった会社が多い。
したがって商売は上手いし、それなりの仕事をする。

「時代の変遷とともに、なんていうならわが社も同じだ」
と、物流会社以外から声が上がるだろう。
そうです。まさにそのとおりであります。
どんくさくてのんびり屋が多い物流業界の努力や工夫の程度なら、一般事業会社にとっては跨ぐにたやすい低いハードルかもしれない。

だから貴社は自ら物流設計すべきであると申し上げている。

したたかでしなやかで機敏。
一般事業会社のそれは、物流業務には過分なほどかもしれない。

必ずできるはずです。
自社の物流設計。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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