少し前に「パートさんの採用面接時に気を付けなければならないことは何ですか?」という質問を受けたが、その人はこのよもやま話の読者でもある。
――にもかかわらずワタクシに面接ノウハウを尋ねるとは、、、ひょっとして失敗したいのか?
なんていう疑念が脳裏をよぎったが、一応「人様に教示できるようなノウハウや成功談などないですよ」と、いかにも謙遜するふりをしつつ「困ったなぁ。どうやってこの場をしのごうか」と必死に考えたあげくに口にしたのが以下のようなハナシだった。(一部を抜粋)
現場のパートさんを採用するにあたって、担当者の方々がこだわったりポイントとして注意していることのいくつかを挙げてみると、、、
・第一に清潔感(あくまで主観的に、ではあるけれど)
・受け答えの簡潔さ
・未経験者を優先
・不愛想だが質問に対する回答時には明瞭簡潔
・口数と笑顔が少ない、、、のは好ましい(独自の理由あり)
・髪色やタトゥーの有無は不問(終業時は帽子や長袖着用)
・服装の色やデザインがチグハグな人は避ける
・事務職経験者もしくは事務仕事に拒絶や忌避感がない
・労働条件の質問や確認を臆することなくできる
・過ぎた化粧やきつい香料は×(面接時だけでは判断材料不足ながら)
・礼儀作法へのこだわり強すぎはかえってマイナス
・運動経験ありは○(学生時代に運動部所属は評価プラス)
・いきなり自社名検索して応募は◎(まず会社ありきで求人の有無をチェック)
・検索キーワードによって評価アップ(どういうキーワード経路で探したか)
各社の担当者の面接ノウハウは実に多種多彩であるし、人によっては独特すぎて「そんなことで人材の善し悪しがわかるのかなぁ」というのにもたまーに遭遇する。
いろいろ聞いた中で、個人的にタイヘン秀逸と感じ入ったのは、
「面接の際には10年後の主力となってくれそうな人を第一に採用しています」
という言葉だった。
その物流拠点は自社の知名度と好感度の後押しもあって、現在はパート従業員の採用に困っているわけではない。
なので余裕のある今のうちに、「この人はいずれ主力になってくれそう」と思える応募者については、年間の所得制限や子育ての都合で変則勤務だったりしても、できる限りの融通をきかせて勤務継続できるよう取り計らっているのだという。
読者諸氏ご賢察のとおり、その採用担当者は「いずれ自分がこのセンターの長となる時の主力を今から確保・養成しておきたい」と内心で目論んでいる。ただし面接時にそのような期待の言葉を応募者本人に伝えることはしない。あくまで胸中密かに「来るべき時に向けて準備」しているのだという。
「素晴らしい」と感動しつつ、企業によってさまざまに事情が違うとはいえ、他社でも同じように考える若手社員や中間管理職が増えればよいのに、、、と切に願った次第だ。
前向きな野心のために伏線を張り下準備を欠かさぬ如才なさは、その人物の将来性に加えてその事業所の未来も明るくしてくれそう――という期待が高まり心躍るような気分になる。
中高年の雇用を人員不足に迫られての「やむにやまれぬ苦肉の策」と捉えるばかりでは、いつまでたってもシンドイし限がない。わが国の人口動態からして、今以上の労働力不足に至ることは明らかなのだから、じっくり時間をかけて若年層やその上の世代を「生え抜き」として育て、「ものすごい中高年集団」を有する現場への布石とすることに躊躇は無用である。
もしワタクシが若き日に戻って中堅どころの現場マネージャーを務めるなら、、、
そんな夢想が止まぬ年の瀬のひと時であります。
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永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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