企業内の物流部門は名実ともに川下に置かれ、その立場はとても弱い。
というケースばかりではない。
社内的には専横と陰口を叩かれるほど、自部門至上主義を貫いていたりする。
「ここだけの話です」と小声で首を傾げる仕入や営業部門の担当者の顔が何人も浮かぶ。
‘ 建前としては完全内製 ’ の自社物流では珍しくない現象だ。
一般事業会社に多いが、物流部門を営業本部にぶら下げたり商品本部に置く組織構成がある。営業本部パターンはキーが「顧客」、商品本部なら「商品」になる。
忌憚なく申し上げれば、どちらもお薦めしない。
モノを扱う業界ではOEMやPBによる商品調達はごくごく普通の手法となっている。
なのになぜ物流部門では自社設計による規格の業務を委託するという明確な区分けが存在しないのだろうか?
外部委託にあたっては自社の詳細な要望を伝え、それに応じた提案がなされる。
しかし、委託側が伝えている内容は往々にして答のみであったり対処であったりする。
咳が出て辛いから薬をくれと要望し、相手は相応の処方をする。
症状が治まって楽になれば「なぜ咳が出たのか」は考えなくなる。
新しいパート従業員さんが入社してきて、まずは配置される作業場所はどこか。
リフトマン以外の未経験者ならピッキングゾーンだろう。
たとえ経験者であっても、自社の物流現場を理解してもらうためには、入社後しばらくはピッキング作業してもらうことがOJTとして最も有効で業務フローやルールの理解に役立つ。
倉庫を持たずに物流業務を丸ごと外部委託したり、自社物流の庫内業務を委託している会社のほとんどは、すでに自社で内製化できる素地が相当に整っている。
少し乱暴に聞こえるかもしれないが、現実には委託先に上手く使われている状態が常であるからなのだ。
チャリンコでこけると痛いし危ないので、補助輪つけて走っているうち、外してもゼンゼン大丈夫になっていた。
それどころか、いつのまにか自社が委託先の品質維持やら効率性維持や宣伝用素材のための補助輪になっている、というようなホラーみたいな実話がよくある。
いつから?
企業物流の改善依頼は二つのパターンがその大半を占める。
ひとつは本当に問題が山積露見していて緊急手術が必要なケース。
なのに、ある程度の計画期間をかけて吟味しながら遅くとも〇年後までには、、、
去年でも一昨年でも遅すぎたのではないか?
とは言えないので、
「いやいや年内、遅くても今期の事業年度内にはやりきりましょう」
と引きつった笑顔で提案。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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