毎年梅雨時になるとブツブツ文句を垂れだすワタクシ。とはいえ、具体的な事象に向かって不平不満を抱いているわけではなく、単に蒸し暑く過ごしにくいのが気に食わんのだ。
「あぁ嫌じゃ」と、こんな気候にウンザリしているのは私だけではないはずだ。もはや国土の大半が亜熱帯化しているわが国なのだから、みんなでヤセ我慢などせず、夏の休暇は最低でも一週間、できれば10日以上の取得を努力目標ではなく、義務化できんもんか。
毎年毎度、飽きもせず同じ言い分で恐縮だが、苛酷で無体な高温多湿の夏季には、勤務調整による労働密度の緩和が合理的だし、事業用省電力にも寄与するはず。
大都市部ならば、修行のような耐久通勤が回避できたりと、ずいぶんとマシになる。
長期休暇ではなく在宅勤務推奨期間とするだけでも体の負担は減るに違いない。
コロナ禍収束、つまりウィルス常在化受容によるオフィス参勤交代の復活推奨ムードお盛んとはいえ、極端な気象条件時にはみんなこぞってテレワークに振り替えてもよいではないか。
ただしどうしても労働意欲がわかぬ日は、テレワークではなく有休を取って荒天の休日を過ごすのも大いによろしい。
もはやすっかり馴染んでしまった「働いているふり」に苦心すること多い偽テレワーク稼業からきっぱり足を洗い、後ろめたさゼロで思いのままに楽しむほうが健全というものだ。
近年の傾向として、梅雨期にもかかわらず大型台風や巨大低気圧による暴風雨やら長時間にわたる落雷やら線状降水帯やら、とかくお空模様は忙しなく目まぐるしい。
今や珍しくなくなってしまったが、時として安全のために外出や屋外業務などはもってのほかとすべき「危険」や「警戒」レベルの気象変化が突然発生する。
なので、長期休暇とは別に「荒天有給」または「気象異変有給」も手当てするというのはどうだろうか。すでに先例多数の、法定有給以外の特定条件有給に加えるにあたっては一定の合理性が認められると思うが、はたして企業側が正面から取り組むのか?
、、、についてはまだ聴き取れていない。
有休増加は企業収益の圧迫要因となる、という理屈はわかったうえで書いている。
運用としては、賃金維持で休暇日数増なら実質昇給となるわけで、単なる人件費増ではない。したがって企業ごとの業務運営手腕によって相当な差が付く場面となりそうだ。
言うまでもなく、額面の報酬体系の補完として「働く者を守る」制度を持つ企業は、優良企業としての内実を兼ね備えていると評価されるだろう。
今後の国内雇用では、単なる高給訴求では魅力よりも労働内容・環境への猜疑心が勝ってしまい、求める人材に会えなくなってしまうのではないかと推測している。
物資に恵まれて育った30代以下の人材たちは、その上の世代に比してモノやカネへの飢えや執着が弱い。加えて滅私奉公などという価値観など論外と切捨てて軽蔑しか感じないだろうし、所属企業への隷属的な忠誠心なども希薄――というよりそもそも感覚として持ち合わせていないようだ。(もちろん全員誰しも、という意ではない)
しかしながら、本人の個人生活にプラスとなる労働環境や権利要件をクリアすれば、にわかに関心度が高まるというのが人材募集や雇用維持を手がける専門家の説明である。
誰しも報酬額は多い方が好ましく感じるのは当然ながら、厚遇という言葉の中身には給与以外にもいくつかの譲らぬ項目があるという。
その多くは労働時間であり、裁量労働制であり、福利厚生である。
私なりに言い換えれば、可処分所得と可処分時間のバランスが、自分自身の暮らしに好ましいか否かによるところが大きいと思える。
取り違えてならないのは、若い世代の労働意欲は決して低くないということだ。
懸命に泥臭く、ある時には休む間も惜しんで働くことを厭うわけではない。しかしその理由や目的に明確な根拠や価値を実感していないままでの労働は、ひと昔前の「滅私奉公」でしかなく、あくまで自分自身と家族を犠牲にしない働きかたを前提としたうえで、労働条件の是非を問うのだと思える。
ワタクシ的には、今の時代に学卒となっていたなら、社会に出ても異端扱いされなかったのかもしれないなぁ、としみじみ思う。異論反論さまざまにあろうが、まともな感覚でモノを言っても障りない世になってよかったというのが偽らざる実感だ。人間を苦しめたり虐げたりする仕組は必ず滅びると信じ言い続けてきたので、現状の世相を非常に好ましく感じている。
強い物流企業でありたい、もしくは自社に強い物流機能を欲するなら、人材のアタマカズ獲得に汗をかくのではなく、今いる人材の労働環境と条件を改善することがイロハのイである。
管理者諸氏には、幸福の青い鳥はすでに手もとに居るのだと気付いてほしい。「新しい人材はより優れているはず」が妄信と化している事業所は少なくないが、いったい何年間青い鳥を探しているのか考えてみてはいかがか。
国内物流は量や速度を競う分野ではなくなりつつある。
つまり成熟市場への変貌を遂げようとしているのだ。
「早かろう安かろうが最善」という認識が長く横行してきた物流業界だったが、経営意識の改変による自浄作用が否応なく求められることは今さらのハナシだ。
相当の危機感をもって業界全体の平均点を上げなければならない。さもなければ、市場成熟と表裏一体で進行する市場縮小の中身が「老練」ではなく「老衰」となってしまう。
荷主企業内部で進む労働価値観の見直しは、委託先の物流事業者への要求内容にも及び、満たせない事業者は委託解除の憂き目に見舞われる。失った仕事を埋めるために、旧態依然のまま価格訴求の昏い(くらい)森で彷徨い続けた果てにたどり着く場所は言わずと知れている。
先週はパスカル。今週はダーウィン……というほどのハナシではないけれど。
追記
こういうハナシをすると、必ず出るのが、
「倉庫業務ならある程度弾力的に制度運用できますが、運輸についてはなかなか、、、」
という否定的見解だ。
それについては、来週の掲載で書いてみたい。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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