物流よもやま話 Blog

マイナスをつぶしているだけ

カテゴリ: 経営

「物流改善とは、具体的にどんなことをするのですか?」
「ただひたすらにマイナスをゼロにするだけです」

という類の会話を何度もしてきたような気がする。
メディアやシステム事業者、営業倉庫、そして自社物流に係る諸氏との初対面時。ひととおりの挨拶が終り、次にかわされるやり取りは冒頭のような内容が専らである。

他業種でも定石化していると思うが、マイナス要素をつぶすための観察・ヒアリング・提案を行うことで、多くの現場は活性化するし、その後にちょいと教習して、課題を投げかければ、自ずと改善への揚力が生まれてくる、というのが今までの常だった。

それは物流部門に限ったハナシではないと思っている。
そもそも拙者ふぜいが「やる気を出させる術」や「モチベーションアップの秘策」などを持ち合わせているはずない。なので他人様の内心や秘めたる想いを察して、先回りした言葉や仕掛けを用意するような達者には遠く及びもしない。

最多パターンとしては、関与先の社員の方々が潜在的にたくさんの能力を有していたり、チラチラと有能さが見え隠れしているにもかかわらず、それを引き出して活用する呼び水的なきっかけがない――のような状況下で“改善進行の目次提案係”に徹することがほとんどだった。
つまり丁寧な観察と分析と判断をアタリマエの基準で迷いなく行えれば、その組織本来の能力が勝手に発動するだけのハナシである。
人体に自己免疫や自然治癒力が備わっているのと同様に、物流現場にも本来の自浄力や回復力や推進拡張する能力が必ず潜在している。私の仕事はそれを引き出しているにすぎず、業務関与している時間の中で、ためになる体験談や秀逸な技術論などは皆無に近い。

会社によって多少の違いはあるものの、部門責任者や管理者には「働く者がやる気を削がれたり、意気消沈するような慣例や不要物や単なるシンボル的無用事は徹底的につぶしましょう」と言い続けてきた。当然ながら一度では伝わらないし、長く習慣化してきた規則や順序や精神論は一朝一夕には排除や改変できないことは書くまでもない。

管理職一同の脳内回路を揉み解したり、定点からの視野視点を変えてみたくなるように誘導したり、考察軸を追加して課題対象の捉え方を立体化してもらったり、、、
のような作業こそが最難関であることは企業の別を問わない。
役職が重くなるほど、プラスへの試行や努力には加勢を惜しまないが、既存のマイナス要素や手かせ足かせとなっている慣習などを再検証することあまり乗ってこないものだ。

他人事なら「そのとおり」とうなずけるハナシも、いざ自社の具体論となればフンガフンガごにょごにょ言っているだけのエライお方は少なくない。
経営層や管理層は自ら名乗り出て、マイナス要素駆除作戦の旗振り役を務めていただきたいと強く願う。やっただけの見返りは大いに期待できます。プラマイゼロの状態で仕事させれば、結構やるはずですよ、、貴社の物流管理職とその部下たちとパートアルバイトさんの面々。

社長が倉庫を歩くとき。
役員が倉庫を歩くとき。
必ず現場の困りごとが解決できるはず。
そして現場は変わります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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