いよいよ現実味を帯びてきた貨物新幹線の運行――というハナシばかりがあちらこちらで取りざたされたり、具体的な計画策定を試みたり、いかにも打開困難そうな懸案事項がいくつか挙げられたりして、ちょっと散らかり気味に過ぎるようだ。
個人的には掲題の二要件が手当できればなんとかなるのではないかと考えている。
それなりの理由によって、今のところ東海道・山陽新幹線が候補にすら上がっていないようだが、そこを外しての計画となると一気に魅力や効果見込みが下がってしまうと思える。
専用ターミナルにしても夜間走行にしても、用地手当てと減速走行による騒音低減措置によって相当程度の対処可能となるはずだと考えているが、そのあたりどうなのだろうか。
貨物便走行による線路負荷の増加が案じられるという意見については、現状限界値内での運用から始めて、順次高負荷耐用の線路を敷設してゆくというのは浅はかな素人考えなのか。
できない理由を並べるよりもどうやったらできるのかを積極的に論じて欲しいと願う。
2024年問題やら職業ドライバーの高齢化や人材不足の問題と併せ、個配配送の地域格差の筆頭とされる所要時間と割増コストの問題の大部分を解決してくれる方策として圧倒的であるし、既存のインフラの延長線上で実現可能だという点でも加点要素が多い。
遅々として進まないリニアモーターカーよりも、新幹線インフラの貨物運用拡大のほうがはるかに国民生活貢献度は高いと思える。そのうえに着手の具体が明確でわかりいい。
誤解なきよう添えておくが、新幹線一辺倒主義でもリニアを頭から否定しているのでもない。凝り固まってた「アタリマエ」を根本から見直してはどうかというハナシである。
「現状のリニアモーターカーを旅客ではなく貨物専用とする。それによって完全な自動制御による無人運転の貨物路線網が国内に敷設できる」
つまり「旅客は新幹線」「貨物はリニア」というほうが総合的にはインフラ効果が高くなるような気がしてならないが、読者諸氏はいかがお考えになるのだろうか。
無人貨物車両なら、現在の想定航行速度よりもさらに上げての実用化も可能となるかもしれないし、リニアならば騒音問題の障壁も一気に低くなる。
つまり24時間航行の国内貨物網が敷ける、、、という妄想を20年ぐらい前からしている。
初めてリニアモーターカーの話を聞いたのはまだ20代半ばのころだったと思う。
「米国で開発中のリニアモーターカーとかいう乗り物が完成したら、ニューヨークとロサンゼルス間が30分ぐらいで行き来できるようになるらしい」という内容だったが、私は瞬時に「そんな超高速車両に人間が乗るのはイロイロ心配でちょっと怖いので、まずは貨物便から始めればよいのでは」と脳裏に思い浮かべたのだった。
それ以来、リニアのハナシを聞くたびに、貨物運用のほうが断然有効で具体性が増す、と言い張って憚らなかった。今もその考えにまったく変わりはないが、最近では「狭い日本でチマチマ運用せずとも、国内での試験・試用が済んだら、即座に車両製造技術と運行管理ノウハウとインフラ整備をパッケージ化して、広大な国々に輸出すればよい」と思うようになってきた。
異論はあろうが、国内移動ならば既存の交通インフラで十二分に用が足りていると思うし、今後の日本人は「金はそんなにないが、時間はけっこうあるぞ」という状況になるはずだ。
なのでこれ以上のせっかちな仕組は余剰設備・余剰サービスでしかなくなると考えている。
とここまで書いて「せまい日本 そんなに急いで どこへ行く」という川柳を思い出した。
調べたら1973年(昭和48年)の内閣総理大臣賞に輝いた交通安全年間スローガンなのだとか。
半世紀前の標語を今一度、、、温故知新ということなのだ。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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