物流よもやま話 Blog

本末転倒

カテゴリ: 経営

現場の人員配置は現状及第であっても、そこに安住せず追求し続けなければならないテーマの一つ。そしてそれは物流業務だけにとどまらない。
物流の場合には、入荷出荷の週月年の波動分析と日計総工数、延べ時間、作業者の複数能工化の進捗度によって必要総時間が算出でき、必要人員数が決まる。

よくあるのは、現状の仕入や受注の実態は検証なしで、いきなり物流現場の分析に取り掛かるパターンだが、すでに迷路をさまよい始めている。
結論から言うと、現場をいじくり回しても大して変わらない。
いじくり回した事実だけが努力として残るが、報われることはあまりない。
「物流は物理的要素が大きい。抜本的な改変を乱暴に急ぐと、お客様に迷惑がかかる」
が、常套句として締めの言葉になる。

本末転倒である。

顧客へのサービス向上とコスト転嫁の極小化のためにやるのだ。
それを競争力と解している。
数日現場を止めてでもやり抜く覚悟がなければ、真の改善は不可能と考えていただきたい。
その間、顧客には不便をかけることになるが、余裕のある事前告知と丁寧な趣旨説明、再開後の顧客メリットを約束できれば理解は得られる。
休止期間の欠品防止策と緊急対応が備わった内容であれば、顧客へのしわ寄せは最小限に抑えられるはずだし、その按配は営業担当が心得ている。
「ウチにとって何が得になるのか不明だし、いきなり来月下旬予定と言われても困る」
などの、顧客の反発を招きかねない段取りは絶対避けるべきだ。

併せて、仕入先とのルール改変にも絶好の機会なので、これは偉い方々の出番となる。
顧客相手ならいそいそ出向く経営層、管理層ではあるが、仕入先にはそうそう足を向けない。
ここは是非訪問の上、発注から納品までの流れを仕入先全社共通事項として周知徹底する旨、腰を低くし頭を高くしながら依頼するべきだと進言させていただく。
「相談や伺い」ではなく「決定事項への理解と協力願い」でなければならない。もちろん不退転の決意が誰の目にも明らかな文体と開始の日付入りで。

上が汗をかけば下は楽になる。上が汗をかけば下はキリット締まる。そりゃそうだろう。
単に楽をさせるのではない。
不要な戸惑いや猜疑がなくなり、課された仕事に没頭するのみの現場ができあがる。

ミスや勘違いの言い訳は激減する。
過去事例から記せば、業務効率が向上すればするほど退職者数が減る。
忙しくなっているにもかかわらず、働きやすくなっているのだ。

以前よりタイトで厳密になったのに楽になる。
そういう事例は多い。
強い会社には強靭な下半身が備わっている。
それを物流という。
速く走る、高く跳ぶ。
そんな場面で差がつくとしたら、それは下半身の違いかもしれない。
上半身に見合った体躯を作ることは経営の受け持つべきところ。
明晰な頭脳に屈強な腕力。それを支える強靭な下半身。
まさに優良企業たるバランスのよい体躯。
誰もがそう認めるに違いない。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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