「面接の際には10年後の主力となってくれそうな人を第一に採用しています」
という言葉だった。
その物流拠点は自社の知名度と好感度の後押しもあって、現在はパート従業員の採用に困っているわけではない。
なので余裕のある今のうちに、「この人はいずれ主力になってくれそう」と思える応募者については、年間の所得制限や子育ての都合で変則勤務だったりしても、できる限りの融通をもって勤務継続できるよう取り計らっているのだという。
人材育成と雇用安定は部門経営の基本。
売手市場であるからと言って、あまくゆるい体制管理はなんの解決策にもつながらない。
辛辣に過ぎるかもしれないが、管理者の怠慢と能力不足が「働きやすさ=従業員への忖度」という見当違いも甚だしい「安直で汗をかく気がない愚」を生み出している。
先日テレビニュースを観ていたら、高齢化・過疎化が進むエリアでの「荷を届ける方法」についてのハナシが放送されていた。
その特集ではドローンを活用して高齢者世帯やへき地に住まう住民に配達できないもんかとアレコレ苦心する人たちの姿が映し出されていた。
現場管理者にとって、パート従業員の年収調整はややこしくデリケートなモンダイだと思う。
103万、106万、130万、150万、201.6万、調整なし――のように居並ぶ「年収の壁」と呼ばれる切実な事情が現場従業員のそれぞれにある。
整理整頓すれば特別難しくないハナシなのだが、往々にして「いくらまでならどうなるんだっけ?」という会話が管理者諸氏の口から洩れることも少なくない。
つまり丁寧な観察と分析と判断をアタリマエの基準で迷いなく行えれば、その組織本来の能力が勝手に発動するだけのハナシである。人体に自己免疫や自然治癒力が備わっているのと同様に、物流現場にも本来の自浄力や回復力や推進拡張する能力が必ず潜在している。
私の仕事はそれを引き出しているにすぎず、業務関与している時間の中で、ためになるハナシや秀逸な技術論などは皆無に近い
主眼を置くべきは中長距離便ドライバーの稼働時間が減ることなのだから、
・出荷口数を減らす
・時間猶予する
・実車率・積載率を上げる
のいずれかから手を付けるのはあたりまえである。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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