物流よもやま話 Blog

作業服と靴のモンダイ

カテゴリ: 本質

作業時の衣服については大昔から議論が尽きない。制服の是非から始まり、その仕様やコストや「どこまでを統一するのか」など、正解や決定打的な結論が出ていない。
制服のアリ・ナシ、支給・貸与・買取、さらにはタオルや手袋や文具類、そして、、、靴。
そうなのだ。数ある議論の中でもクツの問題はもっとも意見がまとまらぬことの第一に挙げられるような気がするし、その理由もわかりやすい。
履き心地などの「合う・合わぬ」には個人差が激しく、他物に比して我慢がきかない点、さらには作業内容によって履物の種別が異なってくるから、、、というのがよくあるハナシだ。

たとえば、とある企業の物流倉庫では、帽子から靴にいたるまでの上から下まで全部を「制服」として貸与している。洗濯等の手入れと貸与品の保管は各自の負担である。
制服には三種類がある。
・庫内の一般作業者用
・事務職用
・管理職用
という区分けなのだが、今時にしては珍しく「管理職用」が明確に分けられている。
時代錯誤というご指摘もあろうかとは思うが、実は管理職用の一式が最安コストであるという補足情報を添えておく。また事務職用の椅子は管理者用よりも高額である。
いちいちの理由は記さないが「活きたお金の遣いかた」を具現しているひとつの事例として紹介した次第だ。個人的にはこういう合理性がタイヘン好きである。
(内容は違えど、このようなメリハリのきいた手配を旨としている事業者は多い)

しかし上述のような達者な自社物流倉庫でも「制服における靴のモンダイ」には四苦八苦で紆余曲折のまま今に至るのだという。読者諸氏はすでにお察しのとおり、作業内容や歩行距離によって靴の履き心地は評価が違ってくるからに他ならない。
で、そんな厄介事を解決したのは、ひとりの若手現場担当者だった、、、プロジェクト・バツ、じゃなくってプロジェクトxさながらの、、、てなハナシでもなかったようだ。
単に「中敷き」を作業に合わせて変えたのだった。スポーツやトレッキングなどでよく聞くのは「靴の中敷きを変えると歩行や走行の感覚が大きく変わり、疲労軽減やケガ防止に有効」というハナシだ。言われてみれば確かに靴のアッパーの仕様もさることながらソール、特にインソールが履き心地や運動時の感覚に影響するのは当然である。

その事業者は制服一式のアイテムとして、作業用の靴をスポーツ用品メーカーに同一モデルの型番違い・インソールは標準と別に二種類を特注したのだとか。
このように各事業者がそれぞれに工夫している反面、近年の大きな流れとしては制服廃止に向かっていることは明らかだ。制服があるにしても冬季防寒用とその他シーズン兼用のジャンパーぐらいを貸与か支給するにとどめる事業者が目に付く。

制服廃止論の最たる理由として、購買コスト以上に管理上の面倒事がよく指摘される。貸与や支給の別なく、個人管理の内容に結構な幅があり、その監視や管理に手間や気を遣うのは本来業務の妨げになりかねない、、、庫内美装の延長に制服による統一美があるという趣旨については時代錯誤も甚だしいので即刻廃止、、、という意見は少なくないようだ。

そこまで突き詰めずともよいのに、、、はボヤキまじりの独り言である。
外見で人を判断するな。
服装や髪形や髭などは個人の領域なので、社則や社是がそこを侵すような言動は慎むべき。
外見や服装と能力に因果関係はない。

肝心要は靴の外側よりも内側のソール。一見全部同じようでも中身は違う。
というハナシを聴く耳も必要ではないのか?
と思うワタクシであります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

最近の記事

アーカイブ

カテゴリ

お問い合わせ Contact

ご相談・ご質問等ございましたら、
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム