物流よもやま話 Blog

泣く子と熱暑には勝てぬので

カテゴリ: 余談

今日は年休消化日とし、昨日から来週16日まで夏季休暇という会社が多い。
私の世代ならつい「盆休み」と口にしてしまう8月中旬のまとまった連休だが、30代以下は夏季休暇と表現する人が大半だと思える。
NHKの調査によれば、この期間中に帰省や行楽を控え、自宅近辺で過ごす人々の比率が5割超なのだとか。「コロナ禍ゆえの」という説明は今やお決まりとなったが、今夏については、はたしてこの疫災が要因のすべてなのかという疑念が過る。コロナ禍収束後にその答は出るはずだが、人々の行動パターンのいくつかは2019年以前には戻るまい、というのが私見である。

それにしてもひどい熱気である。加えて熱帯性の降水帯が日本列島の東西南北に苛烈な水害をもたらしている。水害と炎天の波状攻撃に見舞われる地域もあって、インフラ破壊やマヒによる機能停止に苦しむ人々を想うと胸が痛む。
幸いにも自宅近辺や顧客所在地での被害は今のところないが、明日はわが身かもしれぬという危惧は、各地での被災情報を見聞きするたびに過る。
今まで起こらなかった現象、、、例えばヤードに水が溜まったままの状態となったり、過去に眼にしたことがないような水流が敷地内の排水溝の上端ぎりぎりまで嵩増ししたり。
バースのシャッターを全部締め切らねばならぬほどの横殴りの暴風雨が何時間も続いたり、入荷物を運んできた車両が、荷台の扉やウイングを開放できないまま1時間以上立ち往生したり。
勤務を終えたパートさん達が、帰宅の途につくために退出しようにも、駐車・駐輪場までの数十メートルを移動することすら難しいほどの列雨が衰えないまま続いたり。
それと同時に、洪水や土砂崩れで交通網が分断され、物流機能が停止、停滞し、復旧に数週間を要したり。

災い転じて・・・というわけではないが、そろそろ既存の物流常識や作法を見直すべきなのではないだろうか。
毎度言っているのは「時間」の感覚を荷主と物流屋双方で大人の思考回路をもって考える必要があるし、それはたいそうな仕掛けや投資など無用のまま、すぐに実行できる。
被災時にはすべての機能が普通どおりではなくなる可能性があるにしても、その「普通」が最短や即日・翌日などのタイトなものではなく、中3日やそれ以上などであれば、被る停滞障害の実感や心理的圧迫は相当減じられるかもしれぬ。何よりも代替案やルートを講じる余裕が生まれるはずだ。
これだけ物流網が発達しているわが国なのだから、時間的猶予さえ確保できれば補完的措置を講じることは場所や対象を選ばず可能だと思う。

個人的には最大の天災は日中の高温と、そのまま下がり切ることなく朝を迎える夜間温度だと思っている。壊滅的な被害ではないものの、個人の生産性や意欲を1割、いや2割以上も減じさせているに違いないと独善的に考えている。
多くの労働者の生産性が夏季期間中は2割ぐらい落ちるとすれば、、、それは国全体でいかほどの効率減であるのか。さらには失われる利益額の試算を行えば、大規模天災に匹敵するような金額となるような気がしてならない。

気象予報が警告するとはいえ、たいした備えや防御なきまま毎年見舞われる高温被害。
今現在の1週間弱か数日の夏季休暇をもっと増やすほうが良いのではないかと思う。そして稼働日の稼働時間は早朝から午前中までと17時から23時ぐらいまでの2部制とし、12時から17時までは不稼働とするほうが効率が良くなるはず。空調などの電気代も減るだろうし、気温がピークを迎える時間帯を回避することで、労働者の生理的負担は大幅に軽減できる。
問題は作業者のシフトであるが、まずは案じるよりアンケートを実施してほしい。
既存のスタッフにヒアリングしてみれば、意外にも早朝希望や夜間勤務可能の声が聴こえるはず、というのが私の経験則だ。もちろん新規募集も並行して行うべきだが、賃金の過剰な割増など付さずとも、応募者は必ずいる。この10年来でその傾向は強まるばかりだし、「隔日出勤、1日3時間でも可」のように可変勤務を容認すれば、反応数は増える。むしろそのようなローテーション配置が可能となるような作業手順の定型化や簡易化を行うのが運営者の責務であるし、できない事業者は常時人手不足に苦しむことになる。

完全停止が難しい業態なら、稼働7割以下の1か月間を実現してほしい。入荷処理や出荷作業の時間的猶予が確保できれば、現場稼働率は必ず下げられる。
そのためには納品先への丁寧な事前説明と理解を得ることが第一だが、これも経験上は総論として承認してもらえるし、各論で条件付きとなるにしても支障ない範囲に収まる。
酷暑の夏季に無理はせず、フル稼働は気候の良いゴールデンウィークや秋の連休にもってくるのが上策。混みあって何かと割高になる大型連休には仕事をし、その前後に休むことを可としたり望む人の比率は増加の一途であるのはこの数年来の現場実態だ。
多様化する勤務形態は事業規則の大幅な改変へと繋がっている。ならば、物流機能の稼働実態も荷受側の実情に応じて変遷するべきであるし、すでに動き始めている荷主企業も数多い。

という上記のいくつかは、暑いのが大の苦手なワタクシの業務避暑案。
本気で「なんとかならんもんか」と知恵をひねっているのでなかなか評判が良い。
「いや本当にお世辞抜きで妙案に感謝しています」とお褒めいただく荷主企業の方々の言葉を鵜呑みにするところが暑気ボケの証左、、、と思わなくもないが、まぁいいや。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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