「大掃除はクソ寒くて水が冷たい年末ではなく、風が心地よく水仕事が苦にならないゴールデンウィークや秋の連休あたりにノンビリ行うのが最善である」
と、大昔から何度も言い続けているわけだが、ぜーんぜん世に広まらない。
大掃除や慰労会やエライお方の訓示を「仕事しない仕事納め」とするよりも、有給取得奨励日にするほうが社員一同はありがたがるに違いない。(想像ではなく聴取して書いている)
往々にして慣習や決まりごとの一連はなかなか変えることができない。その理由も「昔からの行事だから」や「今すぐは難しい」などの理由なき先送りがほぼ全部である。
「年末年始は一堂に会し、区切りの時を共有するのはあたりまえ」という経営者は多い。
そのような価値観硬直や前例隷属を全部否定するつもりはない。
しかしながら物事の始末や組織統制の要となるのは、使い古された虚礼や建前ではなく社員が合理や質実を体感実感できる制度なのだと早く気付いてほしいと願うばかりだ。
(全社員に無記名のアンケートをしてみればよいと思う)
けっしてイマドキのハナシをしているのではない。
ずーっと以前から、強い企業――つまり時代の変遷に逆らわず変化変革を続けて栄える事業者は、顧客と社員の変質や感性の移り変わりに敏感なのだ。
言い換えれば、顧客と社員の満足度が低いと事業の先行きが暗くなることを肌感覚で察知するし、それは過去から引き継がれてきた経営の本質でもあるのだ。
「社員がよくなければよい個客を獲得し維持することはできない」
という定石は今さらここで説明するまでもないだろう。
伝えたいのは、合理性やしなやかさやが経営体質の主要項目に挙げられることが多いのであれば、大掃除や社内行事に対する柔軟な取扱いも同じではないかということだ。
一事が万事、というやつである。
社内行事、社内規則、社内施設。
労働時間の柔軟化、勤務体系の多様化、業務評価の多面化。
「何でもする」から「●●と○○はしない」のような取捨選択こそが肝要。
100点が5人はシンドイので、80点1人と70点を6人揃えればよい。
のような考察に取り組む現場が増えているのは好ましく頼もしい。
現場の働き手たちが不得手・不本意を押し殺すあまり、本来の得手や本意が陰り衰えてゆくのは現場の損につながるのだが、それに気付かぬ管理者は多い。
あきらめるほど頑張ったのか?を自問するのは管理層だけで十分である。
実作業を担う現場職たちは苦手なことからは素早く逃げて、得意なことだけを懸命に行っていればよい。各人の特性によって生じる業務分担の凹凸を均す作業は管理者の仕事だ。
「気候がよくなってきたから来週末に大掃除しよう」
と声掛けできる管理者は、前述した諸課題や制度設計でもしなやかで合理的なはず。
大掃除ではなく中掃除を春と秋ごとに――なんていう年次計画もよいのでは。
自分自身は大掃除どころか中掃除すらしないくせに…と内心で苦笑しつつも厚かましく書いていることを白状しておきます。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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