物流よもやま話 Blog

ウソもホウベンとは言うものの

カテゴリ: 余談

現場ではいかなるウソも厳禁。
とは必ずしも思わないが、一般論としてはダメということになっている。
とはいうものの、なんでもかんでも禁止・順守ばかりでは気が張りすぎて疲れてしまうではないか、と小さくタメイキのワタクシである。

聞けば、すっかり慣用句化している「嘘も方便」という言葉自体があやしいのだとか。
仏教系の宗教家は「嘘は妄語戒、口で犯してはいけない罪の一つである」という。
それが時代の変遷とともに徐々にこなれて拡大解釈されてゆき、教え導く側の坊さんや教職まで安直便利につかい始めたので、庶民の生活に根付いてしまったのかもしれない。

専門家によれば、嘘はよいはずがないが、物事を円満におさめ、迷いからめざめさせるために、時には必要な場合もある”、のような説明となるらしい。モノは言いようである。
「方便」はウパーヤ(サンスクリット語)の訳で、近づく、到達する、巧みなてだて、便宜的な手段や方法という意味をもつ。――四天王寺大学仏教文化研究所のWEB より

というような説明をちゃんと読んだことがなかった。
お釈迦様が人間をはじめすべての生物を導くための手段が方便、、、なんて知らんかった。
神仏を拝まぬワタクシ(世に数多くおはします神仏のほうでも相手にしたくないはず)には方便の真意やいわれなど無縁なのだ。そういえば、ツレの中には家業を継いで坊主になったのもいるが、薬学部を経て薬剤師となり、その後坊主に、、、というのはいかなるホウベンの中身となるのだろうか。ウソ抜きで聞かせてほしいもんである。
あんまり書くと多方面からヒンシュクを買いそうなので、これでやめておく。

世間では「嘘ではないが本当でもない」「嘘をつきたくないので沈黙を通す」「嘘と駆け引きは違う」などの都合よい方便が横行しているし、商売人は常套句として用いる。
しかしながら物流現場はその手の都合よいホウベンが通じにくい場所のひとつだと思う。あくまで自浄機能が壊滅していない事業体では、ということわり付きである。

経理や物流が「嘘も方便」を言い出せば、会社は必ずおかしくなってゆく。
事業体の全部門が過ぎたるウソや装飾や隠ぺいを厳禁とする建前は承知しているが、どこまでをホウベンとみなすかは千差万別と言えよう。
その先のハナシは蛇足なのでここで切るが、拡大解釈や慣例化ほど怖いものはないことぐらい皆知りながらも、嘘が塗り重なって事故や事件となった事例は数多ある。

のようなハナシを先日してきたばかり。
在庫差異や在庫評価や返品再入荷後の処理、、、場合によっては、誤出荷や頻繁な残荷よりもはるかに重篤な病の生まれる場所となることが多い。他部門の都合や事情や要望が強く作用した奇形物や異物の成れの果てをいくつも見てきたので、ホウベンには要注意という念が刷込まれてしまった、、、のはワタクシに限ったハナシではないと思う。

かといって、あまりガチガチに締めすぎてもよろしくない。
清廉潔白、綱紀粛正が行き過ぎれば、杓子定規で弾力に欠ける組織になってしまう。もちろん虚偽や誤魔化しを正当化するつもりはないにしても、白と黒、〇と×ばかりではなく、灰色や△もあってよいのでは?と経験上感じてやまぬ。
なんだか先週のハナシと似たようなことを書いているが、現場運営における永遠のテーマなので、皆で考えて議論を尽くすべきなのだと思っている旨をご理解いただきたい。

馬齢を重ねてますます巧妙で悪質になってきたワタクシ的ホウベンの中身だが、まず生年月日を偽り、経歴にちょいちょいウソや加減乗除が混じるようになってきた――あくまでも、そのほうが聴き手の耳に障らぬだろうというホスピタリティのなせる業である。
「おいくつですか?」と訊かれて、まともに返事したことなどほとんどないこの数年間であるし、誕生月だって少なくても12パターンあるのだ。その際に困るのは干支と星座である。血液型はどれを騙ってもわかりゃしないので無難だとしても、出生地やスポーツ経験とその種別などはなかなか厄介でリスキーだ。「つじつまが合わない」という袋小路ほど怖いもんはない。

家系図の捏造的方便もまぁまぁ多い。
多いのはその年の大河ドラマに絡めた嘘八百的方便である。今年は「藤原某氏の末裔ですが、今となっては言ってもむなしいだけ」という無常観に満ちた物言いがマイブーム。
うまいこと源氏物語や徒然草、その他随筆や歌集などのいくつかを学生時代に読んだので、虚ろとなった記憶ながらも、それらしいハナシができるのだ。
かくして出まかせの経歴や血脈などがもっともらしく聞こえるようだが、昨年たぶらかした人物から「あれれ?確か大内氏の家老職にあたる家の血筋で、関が原では、、、と仰っていましたが…」という辻褄の合わぬ窮地に追いつめられることもあったりする。記憶力の良い人物は要注意で、あまり近づかぬほうがよいと自戒している次第だ。

幼少期から病弱だったので運動は苦手。喧嘩などにはまったく無縁で、小中高大を通してもっぱら帰宅部だった――というハナシは、今現在に至るまでの自堕落な生きざまの方便として最頻出だった。しかもホイホイと嘘をついているつもりが「実はまんざら虚言とも言えぬなぁ」と感じることも少なくなく、結果的には「まぁいいか」となりがちな今日この頃なのだ。

ん?ならば「ウソもホウベン」ではなく「ウソからでたマコト」になってしまうではないか。
掲題に偽りあり、、、かもしれんが都合のいい方便としておゆるしを。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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