物流よもやま話 Blog

鶴の恩返し

カテゴリ: 信条

自分のやっていること、やろうとしていることに名前をつけるとしたら、どんなのがよいのだろうか?
凄腕のコピーライター殿にお願いしたいが、お支払しなければならない報酬が身の丈に合わないだろうから諦めよう。
コンサルなんて呼ばれるのも称するのも違和感だらけだが、世間に説明するには当面の便宜上、不本意でも甘んじるしか致し方ない。

勝手に作っちまうか?それらしいやつを。
何とか管理士とか何とか改善士だとか。
だめじゃ、、、名刺に印字するのが恥ずかしい。
口頭で伝えるのは絶対無理。
そもそもが、そんな肩書に拘ったり安心したりするような会社とは相性がよいと思えんし。
名刺面で仕事できたら楽なもんじゃ。
しかし、自身を過不足なくわかり易く伝えることも誠意の一つ。
特に初対面の相手には必須事項であるはずだと思う。
じゃあどーする?
どういうふうに謳う?
誰かヒント下さい。できればヒントより答を、、、、、
まぁ、おいおい考えよう。

私の仕事は建築屋さんに似ていると思う。
新築・増改築を問わず、施主の望む建物と間取りと機能を、気の利いた生活動線まで考えて設計する。
家族構成・生活時間・周辺環境・家族嗜好・将来設計・好悪区分・合理基準、、、施工予算とその後のランニングコストの目論見。
ヒアリング内容に対して、過ぎる足らずなしの提案。
そんなことを必死でやっている大工の棟梁のようでありたい。
心意気と腕がいい職人を集めて施主の要望を叶えさせていただく。
出来上がりは「思った以上」という言葉をいただいて、良いほうに期待を裏切りたい。

一番の理想は各企業に腕のいい物流専門職を置いてもらうこと。
物流のプロフェッショナルがいれば、企業物流の効率やコスト管理は大きく改善できる。
営業の仕上げである納品のミスが減り、顧客からのクレームや叱責は激減する。結果として営業力が強化される。
入出荷と在庫の管理が整理整頓され、不動・滞留が減少し、過剰な在庫ポジションや欠品などのアンバランスさが消えることで、仕入れの効率化と回転率向上が見込めるので、資金繰り寄与の大きさは想像に難くない。
一年から二年弱ですべての企業はプロフェッショナル・レベルの物流専門職を養成できる。
ひとたび養成すれば、世代をまたいで相伝してゆけばよい。
ロジ・ターミナルの物流専門職養成カリキュラムのすべては「技術」なので、属人的要素はゼロにしてある。つまりは誰から誰にでも継承できる。
ノウハウや経験なんて出し惜しみするものではないと思っている。
減るもんじゃなし。墓まで持って行けないし。
私の及ぶ範囲なら、すべてさらけ出して企業内にタフでしなやかな専門職を養成したい。

小学校の卒業作文にある私の夢は「大工さんになること」だった。
原点回帰。
ちょっと出来すぎか。
でも、職人気質であることは、昔からはっきりと判っていた。
偏屈で頑固。
義理人情は絶対。
意気に感じたらなにがなんでも。

だからたくさんの仕事は請けられない。
自分の目が届かない量を望むことはない。
それでいいと素直に思えるようになった。
請けたからには中途半端にはしない。
自分の存在をかけ、身を削ってでも。

「鶴の恩返し」というハナシは仕事の真髄をついていると思う。
出来上がった素晴らしい織物には自らの羽が。
織れば織るほど身が細る。でも織らねばならない。
織る理由が自身の中にある。そう自分で決めたから。
仕事も同じ。
私には身を削らずとも結果が出せるような才覚はない。
特別な技能や突出した知能もまったくない。
あるのは執念だけである。
絶対にやりきるという自身との約束を仕事の掟としている。

数え切れないぐらい自らに問いかけた言葉がある。

「おまえ、あきらめるほどがんばったんか?」

どの企業でも一個人でも執念を持って挑めば、必ず結果は出せる。
物知り顔で悲観したり、ほどほどの無難な妥協を最初から懐に忍ばせるような「大人の分別」は大嫌いだ。
なんでもかんでもそうあるべきとは思わない。
しかし顧客にかかわる分野については譲れない。
企業にとって顧客とは全コストの負担者であり、明日を約してくれる存在なのだから。

物流は企業が執念をもって取り組むべき対象であって欲しい。
営業から始まった顧客対応の総仕上げは物流が担う。
その機能に拘ることは顧客への礼節であるし、企業の商道徳の一貫性を問われる部分。
顧客獲得に費やすエネルギーをそのままに最終サービスである物流に引継いで欲しい。
執念の強さは信念の揺ぎ無さに比例するものだと信じてやまない。

物言わぬ強靭な機能こそ企業の隠し味として不可欠。
具体的な理由など顧客は知らなくてもよい。
無意識に心地よく安心してくれれば足りる。
玄人の矜持とは潜在的な信頼の中でこそ輝く。

「よくわからんが、ともかく美味い。そのうえ後味がいい」
そんな料理を出す店のような企業は、顧客の支持を得続けるに違いない。

私はそう信じている。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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