物流よもやま話 Blog

暖冬だが乱冬気味なのでは

カテゴリ: 信条

「令和6年能登半島地震」により、亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被災された皆様に心よりお見舞い申しあげます。
被災地の一日も早い復旧、被災者の皆様の心身の回復を祈念いたしております。

予報どおり「暖冬」となっているのは体感として頷ける。たしかに気温の高い日や温湿な曇天雨天の日々が多いが、突然気温が急降下して凍結の朝を迎える数日間が混じることも。
被災地の方々の今を想えば、天候云々ぐらいで文句を言うなどもってのほかと自らをたしなめている。水道光熱に不自由なく、自宅で自炊した食事ができる今日をあたりまえとしてはならぬことを改めて思い知る年初来の日々だった。
かたやで「あたりまえの日常」を支える物流という生業に対して、内なる自尊心と執念を損なわぬよう努めることが自身にできる第一だと強く感じている。
読者諸氏も言葉は違えど、似たような感情を抱いているのではないだろうか。

物流人にとって、極端な気候変動の乱発や予報を裏切る天候不順は大敵である。なぜなら交通網の乱れは、現場スタッフの通勤や貨物路線の通行の障害となるからだ。
特に都市部とその近郊、さらには主要幹線路の起点・分岐点を直撃する暴風雨や短時間の大量降雪は、混乱や渋滞にとどまらず、「マヒ」という最悪の状況を生み出す。
近年急増の「このあたりでこんなことは今までなかった」という気象がもらたす一次被害、それに続くさまざまな二次被害の報告は書き出せばキリがない。
事後検証での共通点は、苛烈な自然現象への事前準備が至らず、被災後の対処・復旧の手順書がなく、地域の誰もがたびたび呆然と立ち尽くす、といった状況に陥るという顛末が常だ。
東京をはじめとする主要都市部での降雪や路面凍結は、交通パニックを引き起こし、各種交通手段の運行障害以前に、労働者の通勤不全に見舞われてしまう。

こうなると全国のあちらこちらに影響が及び、直撃を受けていない地域の物流に支障や滞りが生じるのは近年の事例にあるとおり。
そのたびに行政もメディアも専門家と称する肩書を付された御仁たちも「前代未聞の想定外な現象」のような物言いを神妙にぼそぼそと滅裂に繰り返すばかり。
被災時だけでなく、平時に細やかな現場でのヒアリングや考察を欠かさぬようにしていれば、多少はマシなコメントや検証が出来そうなものだと思うが、喉元過ぎれば熱さ忘れるがごとく、大声で強弁している危機感や警鐘には持続力がないのも毎度のことだ。

天災とまでは至らずとも、ちょっとした気象変動で物流は止まる。平時の想定や準備は屁のツッパリにもなっていない、と空しくつぶやくような場面に何度も遭遇してきたはずだ。
今回の能登半島震災とて、陸路が使えなければ海路・空路でというのは誰しもが思いつくが、その選択肢は超法規的処置がないと実行できない――というのがわが国の現実なのだ。
行政の縦割りやら官庁間の障壁が厚く高い、といった説明には説得力やら合理性は皆無と感じるばかり。「壁」とやらを越えるために必要な手続きの間に被害が拡がり、場合によっては救えた命が失われ、小規模・経度に食い止められたはずの被害が甚大化する。

これらの人災的被害を正すのは政治的処置が最も妥当だ。政治に対する多くの批判や不信や絶望的諦観の声は承知しているが、決して諦めることなく皆で声を上げ続けるべきだと思う。
緊急時に内閣府・防衛省・総務省・国土交通省・厚生労働省・都道府県を横断発動される激甚災害対策には被災者救援に不可欠な物流経路の確保も含まれること間違いない。
消防と自衛隊と物流事業者が横連動すれば、被災地での救助から復旧、そして復興への最適な見取り図が描けるし、実行部隊も現場最適に組めるはずだ。
阪神淡路の大震災来、行政の縦割り障害は着実に緩和改善されつつあるものの、さらなる柔軟化と何種かの想定に基づいた予行演習の実施を国は急ぐべきだろう。

今も救援物資の一時保管場所で自衛隊の方々がフォークと人力で仕分け作業をしているようだが、一刻も早く物流事業者に全部委託するべきだと強く求める。
多方面からの多種多様な物資の荷受と仕分で混乱していると聞くが、入荷情報管理を正しく制御すれば、荷受即出荷という処理が可能となる。被災者から要望の多い「必要物の必要場所への必要数配布」だけでなく、避難所への最短時間配布にもつながるだろう。
荷受時に救援物資別のトリアージを行うべき、は現場に長けた物流人なら誰もが打つ手の第一であるし、それができないと一時保管と即出荷の荷受区分の収拾がつかない。

復旧段階の今こそ「救援物資の配布はうちに仕切らせてくれ」と国交省が出張るべきではないのか。物流事業者は腕まくりして親方日の丸の出動要請を待っているに違いないと思う。
今後の災害発生時にも救援物資の取扱一式については同様、を望む。
(先週末に書いた本稿ゆえ指摘のタイミングが遅い点はお詫びしたします)

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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