物流よもやま話 Blog

企業物流の青い空と青い鳥

カテゴリ: 信条

200社に1社が共感共振してくれたら本望。
そんなつもりで仕事をしている。
俗にいう ’ センミツ ’ とは顧客獲得が難しいとされている業界でよく遣われる言葉。
私の場合は ‘ センイツツ ’  になるので、やや確率が高い。
ギャンブルや宝くじよりも期待値が大きいのでよしとしている。

物流業界は他業種に比して新規顧客獲得に対する熱量や研究が小さく少ない。
企業個別の歩留まり的な指標はあるかもしれないが、その分母と分子の設定もまちまちなので、〇×△程度の相対評価すらおぼつかないことが多い。
そもそも新規開拓営業自体をきちんと行っていない会社が多い。
なので新規獲得についての云々を問われても困る、みたいな戸惑いの言葉は珍しくない。

新しい仕事は欲しいが、荷主企業に直接営業するなんて無理。
顧客を持っている会社に頼んで、下請仕事をもらうのが一番。
これは「うんうん、そのとおり」と大いなる共感と理解を得られる話であるのだ。
仕事とその金額には興味があるが、それが受容できる範囲の内容なら、荷主に拘らない。
というか、興味が無い。
その会社にとっては、元請企業のみが顧客。
「仕事になれば、荷主はどこでもよい」が本心であり現実なのだろう。
これは実際に聞いた本音。
作業会社の典型だが、そういう生き方も一つの形として必要と思う。
傍目には単純作業の繰り返しにしか映らないのだが、注意深く観察してみれば、制約と約束事だらけのオーダーの中に欠片のような自由を見つけ、その中で最大限の工夫をしている。
そんなプロがあちらこちらに存在している。

宛行扶持が回ってくるのを口を開けて待つのみ。
しかし消化能力は素晴らしい。
いくつかの会社が思い浮かんでくる。
一度請けた仕事は長く続く。
それがなによりの証左だといえる。

逆に新規はどんどん入るが、出ていく荷主も同じだけ。
という物流会社も多い。
理由は二つ。
ひとつは仕事が雑で改善要望しても会話が成り立たない。
いや、成り立たないというより、ひたすらに「平身低頭」付きのお詫びとご追従とまたお詫びと愛想笑いと泣き落としと。
営業勝ちの典型、で毎度毎度の同じ顛末。
荷主がその都度に矛先収めていると、一生下手くそな物流作業とお付き合いさせられる。
もうひとつのほうは、廉く始まり、次々値上げとルール改変による規制がきつい。

いずれの場合も「話が違う」と荷主は憤慨。
物流会社は、
「聞いていないことが、次々にあとから出てくるので」
「取引開始時にはなかった業務が増えてきたので」
「ヒアリング内容以上にイレギュラーが多いので」
などの堂々巡り。
口先では詫びや反省や努力目標を真摯に訴えてはいるが、
「文句があるなら出ていけばどうだ。倉庫変更する覚悟はあるのか」
と黒光りする血文字が刻まれた匕首が懐から覗いている。
荷主には重すぎる手間とコストで出来ている砥石で入念に仕上げてあるから切れ味はよい。

双方に非がある。

ヒアリング能力不足。
説明能力不足。
会話のエビデンス不足。
想像力不足。
経験値不足。

まさに破鍋に綴蓋。
「お似合いではないか」と頷いてしまうが、よくある話なので毒舌吐いていたらキリがない。
程度に差があっても、初めての外部委託なら半数以上が出くわすハナシでもある。

さらに書けば、最悪なのは荷主企業と物流会社のトップが双方ともに現場の実態を知らず、「問題ない」と思い込んでいるケース。
「相手は物流のプロなのだから」と疑わない荷主企業の経営層。
「トラブルの報告がゼロなのだから、表敬訪問でいい」と能天気な物流会社のトップ。
これこそ本当の破鍋に綴蓋としか言いようがない。
「お似合いではないか」と突き放す前に気分は沈む。

倉庫比較サイトなどで複数アイミツをとって選んだり、広告や検索で絞り込んだのだろうが、自社に物流業務とコストの判定基準がないのだから、どうしても相対比較になる。

もっとも奇異に感じるのは、「今回選んだ数社」の中に自社が物流委託するにふさわしい相手がいる、という前提で始まっている点だ。
実際には見積提出した全社が不適合というケースは決して珍しくないはずだ。
しかし、「早く選ばなければならない」という切迫感が勝ってしまっているため、一歩下がっての判断ができなくなっていた。
その結果としての破鍋綴蓋状態の今。
大問題なのは「顧客への最終サービスである物流機能」に欠陥や未達要素が恒常的にある、という点だ。企業にとっては看過できない事態であることは自明だろう。

次を探す会社もあれば、我慢し続ける場合も少なくない。
委託会社の変更が2回以上続くと、さすがに懲りて「原点回帰で自社でやろう」となることもあるが、その時の経営状態が許さなければ委託に甘んじるしかない。
最初の会話と定期的な実務状況の確認はいかに大事かが身に染みる。
利益や機会の損失にとどまらず、未来まで危うくする火種になりえる。

自社物流で苦労している会社。外部委託してきたが、内製に切り替えようとしている会社。
おそらくきっと、200社ぐらいと話せば、1社ぐらいは波長が合う会社に出会えるはず。
今までの経験だけを根拠に思い込んでいる。
それが、100社目や50社目ぐらいなら幸運この上ない。

荷主側はどうだろう。物流会社を選定するに当たって、何社と会うのだろうか?
宝探しのような一面を排除できない外部委託先の検索と選定。
配送料金は高止まりではなく、いまだ上昇の途中。
かたやで良質な倉庫物件の売買・賃貸情報が大量に流通するようになる。
上がり続ける最低賃金と長期にわたる労務改変と順守厳格化。

営業倉庫会社は、これ以上吸収できないので、高頻度で委託費用の値上げ申し入れを行う。
上昇コストを丸ごとかそれ以上に顧客転嫁しないと、自分たち倉庫屋が沈むのだ。
生き残りをかけて顧客対応と選別を行うことは必至だ。

外部委託一辺倒ではなく、思い切って自前でやってみたらいかがだろうか。
手前味噌甚だしいが、物流内製化はさほど難しくない。
「天にあっては比翼の鳥、地にあっては連理の枝」は追い求めて止まぬ理想。
しかし、それを倣っての「めぐり会うべき理想の倉庫会社」を探す流浪の旅はもうお止めになってもいいのでは。

狭いながらも楽しい我が家。
狭くないけど楽しい我が家。

貴社の青い空は、今いる場所を見上げればあるのかもしれない。
そして青い鳥が舞っている気がしてならない。
過去や未来に探し物はなく、今にこそ宝物がある。
貴社の青空に舞う幸せの青い鳥
それを正しく伝えることが使命であり喜び。
そう信じて「センイツツ」を唱えている。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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