物流よもやま話 Blog

すべては顧客との出会いから始まる

カテゴリ: 信条

私のお付き合いしてきた経営者の方々はとても個性的な人が多い。
しかしながら、変わっているように感じられるのは表面的な言動であって、その中身は質実で繊細で大胆で巧妙であることがほとんどだった。
中でも創業者の方と話をするのが最も楽しく自然体でいられる。
本当のことや当たり前の話が通じる人が多いからだ。
若い頃から中小企業の社長が顧客の大半であったことも大いに影響していると思う。
礼節以外の気遣いは無用。
従って、こちらの言葉も直截で短いものが続く。
自分の定規で測り、自分の道具で組立て、自分の時計と間合で着地を決める。
ゆえに簡潔明瞭に話せば、相手が訊きたいことや、考えを返してくれる。
いちいちの丁寧な相槌や大げさな驚きという迎合は不要。
放っておけば、ずーっと喋っている。
常人よりエネルギーのレベルが高いので、世の中一般のご追従やお愛想は撥ね返されるか無視されるのが関の山だ。

応か拒か。
正か誤か。
認か否か。

そんな会話で十分である。
最短距離と最短時間で話の趣旨を絞り込み、的確な要旨の把握を行う人が多かった。

二代目や三代目は別意でおもしろい。

先代もしくは先々代を尊敬し、如才なく話し、バランスと合理的な判断を旨とする。
もしくはそう心掛けている。
学歴から職歴、資格、自身の立居振る舞いを鏡に映して確認する。
穏やかな口調、洗練されたビジネススーツ、幅広い人脈、会合やセミナーへのこまめな出席、SNSやブログでの情報発信と知人や新規取引先のアカウントへの如才ない書き込み。
のようなタイプ。

「先代は破天荒で人情深い人だった」
という取引先のご老公様の話に内心うんざりしつつ毎度頭を下げ、その実、今もまだ「破天荒と深すぎた人情」の後始末に追われながらも、なんとか凌ぎ、懸命に工夫し、陰で苦労し、迷いながらも切り替え、緊張と切迫する対面告知で辞めてもらい、将来展望の切実な訴えかけでなんとか入ってもらい、形骸化している取引を薄め止め、希望にあふれる新規を獲り、業界の枠を外して踏み込み、業界の慣例やなれ合いから飛び出し、異業種から学び、ずーっと悩み。
みたいなタイプ。

両方のタイプとも表には決して出さない屈折や忍耐や野心がある。
欠片のような言葉で十分なので、酒でも呑みながら私に漏らしてもらえれば嬉しい。
なんとかお力になれないものかと全力をもって考えたい。
不肖ながらそう思うだろう。

たくさんの経営者と出会ってきた。
思えば私の人生は、中小企業の経営者と会話することで出来上がってきたのだと感じる。

忘れられない出来事。
忘れられない言葉。
忘れられない別れ。

通 柱

すべては出会いから始まった。
顧客と出会うことがすべて。

今もそう信じている。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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