物流よもやま話 Blog

それなりの暮らし方があるはず

カテゴリ: 実態

例年よりも長かった夏季休暇、というのが世間一般だったと聞くが、読者諸氏はいかがだっただろうか。EC絡みなら全休は難しかったかもしれないが、製造や卸の現場なら完全休止した事業所も多かったのではないかと思う。
顧客理解が得られるなら「全部止める」が最善と判じる次第だが、時給や日給で働くスタッフにとっては必ずしも肯けないかもしれない。月の約3分の一が休みになるということは、収入もそれに準じて減るわけだから、生活収支に影響大であることは推して知れる。有給扱いの長期休暇を堂々と取れるような現場はまだまだ少ない――正規・非正規の別なくだ。

労働時間・労働量が減っても報酬額が変わらないという「有給取得率の向上」は、生産性や合理化のみでの対応では不十分であり、結局は「時給上昇の抑制」や「最低賃金は上がるが平均賃金は下がる」といった現象を招く。読者諸氏も実感しているように、現在進行形であり将来展望としても基調として居座ったまま推移することは疑いようがない。

ちなみにワタクシ的には「それならそれでいいじゃねーか。可処分所得が減って可処分時間が増えるなら、それなりの暮らし方をすればよい」という楽観的割切りをずいぶん前から口にしている。ただし、、、今自分が40代前半かそれ未満なら国の行く末に見切りをつけるかもしれないし、20代ならその確率は跳ね上がりそうだと内心でつぶやいていることも書き添えておく。

非正規労働者の急増を生み出した当時の政権批判を未だに止めぬ人々がいるが、政府主導で加速したことは事実ながらも、遅かれ早かれ公務員も民間も非正規労働者比率は上昇の一途となることなど自明だったはずだ。それは先に栄えて先に老いた国々の沿革を読めばすぐに判るハナシであるし、そうなった国々の今が不幸に満ちているか否かも調べてみるべきだ。

この手のハナシを書くたびに想うのは「それなりの暮らし方」という文言だ。物流業界で生きてきたからこそ敏感に感じているのかもしれない。所得を増やす工夫や努力を否定しないが、構造的な流れに抗い抜きんでるのは誰にでもできることではない。しかし消費や過ごし方の中身を変えるための価値観再考や装飾なしの自己満足とは何か?を突き詰めることなどは自分ひとりで今すぐに取り掛かれる。
というようなハナシを関与先ですることが多くなった最近である。

暮らし方が変われば物流事情も変わるはず。
そのキーワードは「所要時間の延長」「猶予と許容」であると数多書いてきたとおり。さらにはBOPISやC&Cなど「物品の能動的受領」がもっと増加すればなおよい、とも。
新たなシステムもマテハンもその他コストも必要なくできる改善策。
誰も困る者はいないはずだが、なぜやろうとしないのかが不明であります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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