先日の主要高速ETC障害は大事件だった。
「まぁ“そうなったらこうなる”ことはわかっているが、実際に巻き込まれたら、、、」
という想いにかられた人がほとんどだったと思う。
事の始まりから最短で「ゲート開放にて対応。性善説的処置で後日自主精算」とすれば、利用者とNEXCO双方の実害は相当減るはず――は発生直後のニュースを見ながら独り言ちた言葉だが、仮面民間組織には酷な対応だろうとも思っていた。
もちろん「迷惑かけられたんだから払いたくない」という人は少なからずいると思う。
「高速でのトラブルや混乱なんて御免こうむりたかった。しかしながら迅速な善後策が講じられたのだから、払わないのは気が引ける」という人がほとんどではなかろうか、、、たぶん。
かたやで「これと似たようなことはあちこちで起きても不思議ないな」
と連想したのも私に限ったことではないはずだ。
たとえばOMSやWMSのいずれかかLMS全体がダウンしてしまったら、どうやって業務をこなすのだろうか。入出荷をアナログ&手作業でするにしても、「久々にやるかぁ」と腕まくりするような倉庫屋は今や希少だろうし、あったとしても未経験者が過半を占めているに違いない。
システムエラーやダウンのリスクはゼロにできない。
なので会社として部門として管理者として用意しておかねばならぬのは「もしシステムが使えなくなったら」という場合の対処策、、、つまりBCPの一項目たる現場運用だ。
「その時になればなんとかする」や「全員で手作業すればよい」などの出たとこ勝負は役に立たぬと伝えておきたい。「イマフウ」の倉庫ほど脆く悲惨な状況に陥りがちだ。
――大きさと数が生み出す「物量」を甘く見てはならぬ。
は物流人が肝に銘じておかねばならぬ戒めである。システム化され、省人化された現場では「もしもこれを人力のみでやったなら」という想像や推計をする機会が無いに等しい。
つまり「もしもシステム障害で庫内のあらゆる利器が使用できなくなったら」という危機管理は有名無実化して久しく、管理者とスタッフの平常意識には存在しない。
なので停電時にバックアップ給電がない場合や、システムバグや改修不備などによってシステムダウンしてしまったら、なすすべなく休業状態になってしまう。
つまり荷受と掃除ぐらいしかできることはなく、やりたくもない会議や勉強会的時間つぶしをして、白紙化しそうな勤務状況に言い訳がましくベタベタ塗り絵をするのだ。
備えをしてこなかった報いなのだが、おそらく管理者以下に罪悪感や後悔はないと思う。
なぜなら「電車などの交通機関が止まったら出勤しなくてよい」と同様に「受注管理や庫内管理システムが動かないと業務はできない」のように思考回路が動くからだ。
こんなハナシは説教じみて不快で退屈。そもそも一定のリスクは排除できない。
と内心でうんざりされて嫌がられる時代になったのだとしたら要注意。
クラッシュの直前には漫然や惰性を下地とする停滞や閉塞が満ちているからだ。
老婆心ながら、歴史は繰り返すのだと添えておく。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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