物流現場で一番ウットウシイものは何か?
普段はふんぞり返ってエラそうなことばっかり言ってるくせに、本社から本当に偉い人が来ればペコペコへらへらオロオロ、、、の小心でお調子者の所長。
も時としてウットウシイが、そんなのとは比べ物にならないほど嫌なモノ。
それは、本社の基幹システムであることが多い。
ローカル(現場)の実務を解っていない本社の各部門が、それぞれの便宜を主張し、システム会社に丸投げして出来上がったヘンテコリンで高価で煩雑な操作が自慢の奇形装置。
納品後に必ず発生する「想定外のバグ」「付加機能のためのオプション料金」「データの取り出し口を設けるための加工」、、、
実は本当に実務に欠かせないものは、納品後に突然皆が気付く「オプション」だったりする。
ほとんどの会社がその例に漏れない。
新車を購入して、オプションが購入価格の3割とか4割とか。
しかも納車後にそれが必要不可欠だとわかる。
そんな自動車メーカーや販売店はありえないし、売り手も買い手も認めない。
国家規制でリコールである。
が、企業では諸々のシステム構築でそんな事態が頻繁に起こる。
「対応についての激しいやり取りと、責任の明確化と対処策の緊急策定及び実施」
という予定調和に落ち着くための茶番みたいな儀式を経て、結局は予算組されてしまう。
要したコストは、ごくあたりまえに冷静なら純利益に置き換えて考えるはずだし、同時に誰もが顔が引きつるはずだ。しかしながら、なぜかシステム関連費用のハナシになると掘り下げたり拒絶したりしないことが多い。
どういうことなのだ?
「システム開発とはそういうもの」と潜在的に刷り込まれているとしか思えない。
下代が10円上がるだけでも、鬼の形相で両目ひん剥いて文句言うくせに。
システム費用を回収するのに何年かかる?
システム会社から提出された数値を切り貼りして、表紙を付け替えた目論見書はきちんと稟議を通してある。
が、誰もその検証をしない。いや、できないのだろう。
数字をいじればそれなりの効果統計はできる。
では費用対実効果ではどうか?
最終現場、例えば物流部門で残業が増えていたり、作業工数が増えていたり、操作ミスによる現場停滞や情報エラーによる誤入荷・誤計上・在庫差異・誤出荷などが増えていたりするのだけれど。
本当にそんなシステムが必要だったのか?
実稼動している機能は全体の5割にも満たないのに。
その5割でさえ、受注管理から在庫引当、出荷完了という流れに大きな支障をきたす元凶となっていることが多いのに。
という言葉を発する者がいないはずない。
大声で挙手して公の会議で、、、まではいかなくとも、内心で思うだろうし、同僚の誰かと話したりもする。
しかしすでに導入してしまっているし、具体的な改変案を会社に求める立場にないし、上席や部門責任者に進言するまでの問題意識は抱いていない。
違和感は大だが、首をかしげながら奇妙な顛末とドタバタの業務を眺めているだけである。
必要悪でもなければそれを良しとするべきものでもないはずだ。
そもそもが企業経営者や統括責任者はそんなことに気付かないほど愚鈍ではない。
では、何ゆえ看過したまま検証しないのか。
理由は単純明快。
検証方法と修正要件がわからないし、導入決定以前から丸投げしてきたから。
納品されて稼動している現在、クレームの果てに返品するのか?
仮に全面的な改変で現在の不備を修正するとして、その完成形の下絵は誰が描くのか?
描いたものが正しく支障なく動き、業務の流れが変わるとしたら、それは具体的にどんなフローで、そのチャートや設計図は誰が作るのか?
作った下絵の可否を誰が検分して決裁するのか?
そんなことができる人材が我社にいるのか?
あぁ、考えても無駄だ。
やはり現状のまま走るしかないだろう。
直近の決算が及第だったのだから、あんまり粗捜しのような議論はしたくない。
注力すべきは今期と来期以降の営業強化の対策であり、バックオフィスや物流ではない。
多少の不具合や不備はどんなシステムにもあるだろうし、あげつらえばきりがない。
各部門それぞれに主張や不満を抱えながら日々過ごしている。
次のシステム改変まで、現状でやり過ごすことが正解なのだ。
業績が順調なら、前倒しして予算捻出できるではないか。
これ以上のシステム関連の議論は不要。仕入と販売をより強くすることが最優先なのだから。
こんな説明と顛末をまた聞きして、何度砂をかむような虚無感に沈んだことか。
わかってはいるが、やはりむなしい。
だからといってあきらめる気もないのだけれど。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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