物流よもやま話 Blog

タイヨとシキュウ

カテゴリ: 実態

会社にはイロイロなモノが備え付けられている。
机や椅子や棚。それから電話やファクシミリやPC。さらにはスマートフォンやら文房具や名刺なども「貸与」されている。最近では個別の占有・使用を禁じるオフィス什器や備品類などの共用を推進する動き――それはフリーアドレスやらフレキシブルスペースやらオープンなんちゃら、、、のような形態の執務スペースが増えているからなのだ。

この傾向は一過性の流行りに終わらない、と思うのには理由がある。
「フリーアドレスのほうが事務所面積が少なくなる」ことに加え、一定頻度の在宅勤務が定着=平均出勤人数減少となるため、オフィス面積縮小の後押しとなっているようだ。

ついでに書けば、既存の自社ビルを売却し最新の建物に賃貸入居する企業がタイヘン増えた。
柱と壁だらけで床効率が悪く、廉からぬ維持管理費や大規模改修の積立金は増加の一途。
耐震診断で壁耐力不足が発覚したが、補強工事の見積もりはどえらい額で現実味がない。
--のような袋小路的苦境から脱しなければならぬ。

外資の旺盛な不動産投資意欲のおかげで、本社の土地建物は高値高騰。
渡りに舟のごとく到来した不動産相場活況。千載一遇の好機としか思えない。
というわけで、所有不動産の売却と賃貸物件への移転を、コスト軽減と働きかた改革の両方を満たす妙案として採用する大企業や中堅企業が増えたのだという。

個人的には「なんだかなぁ」というタメイキまじりのつぶやきの後は口をへの字にして無言となってしまう毎度である。とりわけ「残念じゃ」としみじみ思うのは、学生時代から今に至るまで「名門」と名を馳せ続けている企業の本拠所在地移転の報である。それは馴染み深い企業ロゴやロゴタイプ、コーポレートカラーなどの変更の際にも沸き上がる感情と同じだ。
多くの本拠移転や企業シンボルの変更は違和感や滑稽さに満ちていると思えてしかたない。まるで喪失感と後悔の種蒔きのような合理化乞食や効率化妄信は寒々しくもの悲しい。
感受性のモンダイ、と反論されたら返す言葉はないが。

企業動向の変遷は、物流現場にも少なからず波及して然りである。
ただし「今さらかいな」と現場人たちが苦笑交じりになるのは「貸与物と支給物の明確な線引きと管理」についての社内規則や注意書きが大仰に掲示される場面だと思う。
在庫管理と備品管理が業務品質として徹底されている物流倉庫内では、会社からの貸与品紛失≒出荷物への混入=受領者からのクレームもしくは不信、となる可能性が非常に高い。
ゆえに常日頃から作業に必要な備品類の管理は徹底されている。個人名もしくは番号記号の付された作業用具のウエストバッグやそれに類する携行セットがずらりと並んで管理されている棚や壁フック列は、どの現場でも当たり前のように備わっているはず。始業前と終業後の画像判別がつかぬぐらいの用器具・備品管理は、庫内規範の基本事項のひとつである。

というのを本社・支社でも徹底しようとしてみたら、、、モノを持って帰る・いつの間にかなくなっている・床に落ちている・社食や休憩スペースに放置されている・恒常的に打合せスペースに一式置かれたままになっている…という体たらくは珍しくないハナシだと思う。
センターマスターによって多少の違いこそあれ、物流現場でそのような放置や勝手な場所替えが発覚すれば、その日の終礼と翌日の朝礼で管理職から小言と再発防止の徹底策が発せられるはずであるし、掲示にも強い言葉で再三の注意を促すに違いない。

最近の現場では貸与品が増えて支給品が減った。
支給品が多いと御上から給与扱いされる、、、昔からそんな事例はあるにはあったが、御用になるのは誰の眼にも「それはもはや報奨金の代わりだなぁ」や「税金のかからない現物支給でしょう」とうつるような事例に限られていた。
御上の取り立てが厳しく細かくなるばかりの昨今では、微細な項目や「そんなとろこまで?」と困惑してしまうような支給や補助にまでお縄が及ぶ。

企業個別の事例はあえて挙げずにおくが、福利厚生や会議会食の費用として一定程度認められてきたはずのモノが、今や少しづつ削減や廃止の対象となりつつあるようだ。
その傾向は前出した「名門企業」に顕著であり、20世紀入社世代からすれば世知辛く・うら寂しい限りではないかと察する次第だ。

無料券や破格の社販・優待、社食、さまざまな補助と手当、、、
優良企業は額面年収以外の付加的な報酬が多い--例えば社販や社食で支払う金額と世間一般の支払額の差は明らかに実質的加算給として生活収支に寄与するところ大である。
というハナシなどしても、若い方々は「?」となるのかもしれない。
全部が全部とは思わないが、昇給と引き換えに減じられたモノは多いのだと聞く。

それにつけても、社食や社宅や保養所や優待各種などの手厚い福利厚生、社販や提携先から得られる視えない給与相当差額、潤沢な会社支給品の数々、などとは無縁の人生だった。
と私事ながらも末筆に添えさせていただきます。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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