物流よもやま話 Blog

新入社員の研修メニュー

カテゴリ: 実態

春といえば新入社員たちの初々しい姿が思い起こされる。
そして入社研修が行われる時期でもある。特に新卒者向けの研修メニューは各社各様で、その個性や多彩な内容を見聞きするのが楽しみのひとつなのだ。

「新入社員の研修メニューで、物流関連は何番目にあるのかな?」
と内心で独り言ちつつ、研修スケジュールと内容を眺めてみる。
「ええっと、、、どこにあるのかなぁ、、、最終日は先輩社員との懇親会を兼ねた質問時間が設けられているのか。なかなか良いではないか、、、、ん?物流業務研修が見当たらんかったが、見落としたのだろうか。。。いやいや、初日から最終日までくまなく読んだが、物流倉庫見学どころか、物流業務概論さえないではないか!いったいぜんたいどーゆーことなのだ」
というのが何社かの研修メニューを読み終えた後のお決まりとなっている。

「経理や物流など専門性の高い業務については入社時研修のメニューに加えない」
は特段珍しいハナシではない。
仮にあったとしても、生産工場や研究所と同じく「見学と業務概要の説明」ぐらいまでで、コロナ禍の現在はそれすら行わないことが多い。
昨年と一昨年は悲惨で、入社式はWEBで行い、その後も出社せずに研修もWEBというのが大勢を占めた。式典に始まり配属挨拶までの儀礼にとどまらず、入社時研修まで通信教育さながらののリモート講義。受けるほうも教えるほうも切なくもどかしいことは想像に難くない。
俗にいうエッセンシャルワークとされている物流現場では、部外者の来訪による感染リスク拡大を回避する意もあって、新入社員も同じように現場への立ち入りを制限せざるを得ない事実は苦々しくやるせない。

かたやで今年度の新卒からは現場研修を復活(企業によっては過去二年の入社組まで対象に加える)というハナシをいくつか耳にした。
多いのは三か月間程度の現場業務研修で、物流概論や自社商流と物流の関係などの座学と現場実務体験という構成だと思う。
ちなみにこの季節にいつも考えさせられるのは「物流部門への新卒配属の是非」についてだ。
物流事業者もしくは物流子会社を除く製造や流通関連の事業会社では、物流部門への新卒配属は基本的にないとしている企業がほとんどで、その理由も似たり寄ったりだ。
「営業や開発、仕入などの他部門を経験してからでないと、業務の位置づけとその意義が理解できないので」という説明が付されるようだが、確かにそれは一理ある。

物流業務に携わる者は、社内の情報流とその中身や区分がある程度理解できているほうが好ましい。現場作業者ではなく業務管理者ならば必須条件となる。
部門間にとどまらず、外部者との接触も多いので、内部事情と外部調整の適当な組み合わせを維持することが求められる。段取りの機転や工夫次第で効率や手間が大きく変わるからだ。

というように、物流部門の業務は一筋縄ではいかないのである。
「あんまりおもしろくない仕事」という本音が社内に蔓延していることは承知しているが、それは物流の機能重要度や収益寄与効果の潜在力を知らないことに起因している。
事業の下半身たる物流機能が担う営業推進力や財務健全化の効用を理解できれば、腕におぼえある強者なら「やってみたい」と感じること稀ではないはずと信じて止まぬ。

そのイロハのイとしてジョブローテーションの経年前に、物流の面白さや価値を平易な説明で教示しておくべきと強く推す次第だ。
「どうして誤出荷してはならないのか」
「どうして在庫差異があってはならないのか」
「誤出荷の生まれる場所はどこなのか」
「在庫差異より怖いものは何か」
「強い会社の経営企画や営業本部が物流部門に問い合わせする内容とは」

などを単純化した事例で平易に説明できれば、その企業の一員としてのスタート時に物流への意識が潜在的ながらも備わるのではと思っている。
新人研修で詰め込まれた物流用語やデフォルメされた図式や文字群が次に立ち上がって、合点がいったり、ストンと腑に落ちるのは、入社後数年を経た時かもしれない。
疑念や滞りの袋小路に面した時、一目散に物流現場へ向かう猛者。
新人時代の研修で習った「物流現場には本当のことしかない」が行動起点のひとつになっているとすれば、この上ない歓びだ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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