スーパーマーケットで買い物するたびに「セルフレジやら自動精算機が当たり前になってきた」と感じる。それに加えて「冷凍冷蔵ケースの拡張設置が増えている」も同じくだ。
思い返せば平成の終わりごろにはすでに、冷凍・冷蔵倉庫の需給ひっ迫・供給不足が謳われ始めていた。それから数年を経て、実需の顕在化が疑いようなく明らかになった昨今、何社かのディベロッパーが先行するかたちで、冷凍・冷蔵倉庫もしくは三温度帯・四温度帯の大型倉庫が積極的に建設されている。
専門家によれば、消費市場から要求される食品品質と価格の双方を満たすためには、冷凍食品やその解凍冷蔵品は好適だという。生鮮品だけでなく半調理品や調理済み品の冷凍状態での販売も拡大の途上にあって、今後も売り場面積を拡げてゆくことは確実なのだとか。
そうなると当然ながらそれに応じた倉庫が必要になるし、運送車両もしかりだ。変わるのは売り場だけでなく、購入者が持ち帰る際の保冷用品や家庭用冷蔵庫の庫内容積に占める冷凍・冷蔵の割合にまで影響は及ぶ。さらには調理自体の価値観や手作り優位主義的な道徳観まで劇的に変えてしまいそうだ。
「たとえば枝豆は冷凍食品がおすすめです。なぜなら、豊作で最高の出来の収穫物を全部買い取って、即座に工場で一括調理して瞬間冷凍します。当然ながら調理工程では、食の安全と安心を厳密に管理し、無用な添加物なども使いません。しかも露地物よりも安価で、天候に左右されず安定的に供給でき、消費者は一定量の買い置きができて合理的なのです」
という、大手冷凍食品会社の方に聞かされたハナシが脳裏によみがえる。
物流は消費の子であり、その母なくしては存えられぬ。
という毎度の持論で恐縮だが、母たる消費の動向にあわせた動きこそ順当といえるはずだ。冷凍・冷蔵倉庫については、新築や増改築の別を問わず、メーカー倉庫の補完機能、流通事業者の外部倉庫などとして今後もますます需要拡大しそうである。
巨大な普通倉庫が林立気味に供給されているが、かたやで特殊機能、特化機能を有する倉庫建屋の不足が顕著なのはいささかお粗末と言える。
ひと昔前に比して、はるかに低価格で低電費な冷凍や冷蔵倉庫ユニットも開発されている。
郊外の巨大建屋だけでなく、市街地の流通店舗跡などでも施設設置ができると聞く。
冷食は価格と品質の優良さに加え、鮮度や賞味期限切れによる廃棄の削減にも寄与するはずなので、上手に活用すれば個人生活だけにとどまらない効用が期待できそうだ。
まだ5月なのに連日のごとく全国あちらこちらでの真夏日を報じるニュース。食料品売り場はますますコールドゾーンの拡張を推進するのではないだろうか。
だとすれば、冷凍・冷蔵倉庫の需要も拡大するに違いない。
そういえばわが家の冷凍庫も常時満床状態になっている。
率先垂範よろしく売り場の変化に即応している好例、と自画自賛している場合ではない。もはや冷凍容量が足らなくなっており、先入先出の徹底や廉価だからという理由が生み出す余剰仕入を禁止しなくてはならない事態に陥っているのだ。
しかし冷蔵庫買い替えによる冷凍室拡張などという予算はない、、、ゆゆしき問題である。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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