物流よもやま話 Blog

科学と計画と明日と

カテゴリ: 実態

またもや緊急事態宣言が出された。
「三度目の正直」のようなニュアンスの政府関係者のコメントが多い。
今回こそは本気出すぞ!という掛け声に不信や徒労感を隠せなくなっているのは私だけではないらしい。と、ニュースなどで流れる街頭インタビューにうなずいてみたりする。

相当な忍耐をもって政治に歩調をあわせてきた医療業界もさすがに堪忍袋の緒が切れたのか、行政主導型の防除施策にはいちいち物申す姿勢が明らかになってきている。
数多い専門家が主張しているとおり、我慢や忍耐を交えた精神論ではなく、科学的根拠に裏打ちされたデータ開示と具体的な日付入り計画表の掲示こそが必要だと思う。
我慢と忍耐を国民に強いるにしても、理性的で開示されたデータに基づいた「臥薪嘗胆ロードマップ」がないままでは、不安や閉塞感は重く漫然と拡がって漂い続ける。
わが国国民の忍耐力や自制心は秀でているし、それは貴い美点である。だからこそ、その抑制に応えるべく行政は慎重に迅速に考え動いてほしいと願う。

内閣は医師会と官僚機構が内輪もめしている場合ではないと今一度襟を正して考えるべきだろう。このままでは医療崩壊以前に経済破綻や商業崩壊してしまう。
復興や再生は、その「もと」となる物があって成り立つ。1に2を続けることは努力と執念で叶うことが多いが、0から1を生み出すエネルギーの量と努力以外の要素も必要とされる難しさは読者諸氏もご承知のとおりだ。
消滅したり完全に停止してしまったら、もはや生き返らないのは人間の身体と同じ――などと経済情勢の行く末を憂うことが多くなった。
このままでは再生の元になる核や芯が消えてしまい、コロナ後に垂直回復を目指そうにも、その主役が激減して勢いがつかぬという事態になりそうだ。
防衛予算の文字と額面はそのままに、今年度に限っては「国防」の中身を軍事関連ではなくコロナ禍防除に変えて、湯水のように突っ込んでほしいと切望する次第だ。

外出制限の影響で、食品主体のスーパーマーケットやゲームソフトなどの室内余暇関連は好調な業績となっているが、アパレルやレジャー関連の業界は瀕死に近い状況だ。
コロナ禍や激甚災害や経済恐慌の別にかかわらず、われわれ物流人は経済の赤裸々な実態を目の当たりにする立場にある。
いかなる報道や分析よりも、物流現場で起こる日々の現実が本当のことであり、そこには一切の修飾が付されていない――それゆえに、入荷動向で明日を知り、出荷動向で今日を知り、在庫動向で昨日までを知ることができる。
だからこそ世相を論じ報じるメディアは、物流現場を訪れるべきなのだ。
そこにあるのは「国内消費の実態」であり、それは時として期待を裏切り、時として悲観を覆す兆しの輝きを確認できるエビデンスとなる。

私の最近はコロナ禍にあっても好調な現場、それとは対極にある混迷と我慢に耐える現場の双方を行き来する毎日だ。
頭が下がるのは、いかなる状況下でも私の依頼主は元気で野心家である。そして一切諦めていない。
そんな相手と浮世の闇を照らし往くために、先立てる心の月に曇りなきよう、と念じて止まぬ日々なのだ。

明日も来週も来月も、明けての来年も。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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