物流よもやま話 Blog

がんばれ老若男女の新人たち

カテゴリ: 経営

一般事業会社の物流部門では新卒者の研修はあっても配属は極めてまれ。
というのが常だと思っているが、
「それは今年度も変わらずですか? 自社物流部門の読者諸氏殿」
と質問したくなるのは例年のことだ。

自社の商材や顧客のことを知らずして物流業務に携わるべきではない。
なんていう正論は承知しているが、さりとて「会社のことをよく知り、成績優秀な者」を物流部門に異動させるかといえば、そんな事例は極めて少ない。
その人事について本人および周囲が「異動事由」を曲解誤解することなく、「ものすごく期待されての栄転である」と手放しに歓んでいるのか?
と第三者的観察眼でながめてみれば、ちょっと違う感じであることのほうが多い。
辞令交付時には前向きであったはずの当人が、異動日になって辞表提出するなんていうのは特段珍しいことではないし、周囲も「やっぱり不本意だったんだろう」と小声で肯きあって納得――がよくあるハナシではなかっただろうか。

私の周辺でも「物流部門についてもやっとこういう人材投入が実現するようになってきたか」とジーンとくるような事例は数えるほどしか見当たらない。
物流業務への偏見以前に、優秀な人材を営業や仕入や生産部門以外に配するほどの余裕がある企業自体が少ないことは承知しているつもりだが、「それにしたってもう少しなんとかならんもんか」と恨み節になりがちなのも事実である。
物流は標高ゼロの頂上を目指す登山のようなもの。それゆえに加点評価の対象となりにくいのかもしれぬが、経営がその気になれば評価基準や人材投入の改新は難しいことではない。

つまり“できない”のではなく“やらない”ということである。
悪意や作為なく「意識にない」という経営者が多いことを経験上思い知らされてきた。
しかしながらあきらめずに唱え続けているのは、
「物流は主業務です。事業の下半身にあたる重要機能に人材投入すれば会社は変わります」
というナガタ念仏にほかならない。

強靭な下半身は上半身のあらゆる要望や動きに呼応――堅実な歩み、機を逃さぬ疾走、高みを目指す跳躍、、、いかなる場面でも粛々と事業を支え続ける頼もしい存在なのです。
という念仏に「上手な物言いですな」とほめてくださる経営者は多いが、次の日どころか一時間後に物流のハナシを思い留めている人物は実在するのかさえ怪しい。
と思うこと数え切れぬわが来し方であります。

今も多くの方々に読んでいただいている拙稿のひとつに

倉庫の仕事を好きになれない理由


というのがある。

老いも若きも新卒者も中途採用者も異動者も定年再雇用者も、なにはともあれ偏見や思い込みはわきに置いて、物流業務に愚直に向き合っていただきたいと心より願い祈る。

「偉大なる平凡こそが物流業務の真骨頂」

応援に代えて、ささやかな拙稿を贈る次第であります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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