物流よもやま話 Blog

止まる・停まる・泊まる

カテゴリ: 本質

これを書いているのは2月4日なのだが、今週はドエライ寒気が大陸からおりてきて、超低温と大雪・凍結の警報が予告されている。うちの近所も氷点下の朝が続くようだ。

荒天は物流屋の敵である。
交通機関の計画運休と事業所の臨時休業は定着しつつあるが、未だ物流業界内で徹底浸透できていないのは「暴風雨雪・凍結が予報されている日は出勤させない」だと痛感している。
荷主やその委託発送者が顧客や委託受領者へ事前に「こういう場合はこうなります」という説明をし、了解を得ておけばよいハナシなのだが、そのあたりが徹底されていない。
業務を止めることこそが転ばぬ先の杖としては最善なのは明白。その道理を誰も反対していないのにどういうわけか嵐に立ち向かおうとする現場管理者は多い。

いつもの小言で恐縮だが、我われの業界で起こるミスやトラブルや事故の大多数は「自損」であり「内部」に起因する。表面的にはそう見えなくても、ちょっと掘り下げてみれば自ら招いた結果であることが多いのは読者諸氏ご存じのとおりだ。

物流業務:事故原因の「自損と他損、内部と外部」

先日関与先に向かう道中、山越えの坂道で数多い大型貨物車両が路肩にへばりついて停車していた。路面凍結によるスタックやトラクション抜けを恐れての判断だと思うが、事故に至る前にそのような措置をとっているドライバー諸氏には敬意を払いつつ徐行通過した。

その後も凍結区間が断続的に十数キロ続いたのだが、片側一車線の急坂で力尽きて停車したままの10t車があった。ドライバーが路肩に配置されている融雪剤を車輪周りに散布している。
こちらも後方でハザード停車して「手伝おうか」と声をかけた。
40代と思しきドライバー氏は「もう撒き終わるので大丈夫です。ありがとうございます」と汗を拭いながら笑顔で返してくれた。ブラックアイスバーン状態の対向車線に出て、10t車をかわしてしばらく進むと路面状態がよくなった。緊張が解れ、小さく息を吐きつつゆっくりと運転していたのだが、ふと先ほどのドライバー氏の笑顔が脳裏によみがえった。
おそらくきっと彼は途中で何度も「これはまずい。このまま行くか、一時停止して気温が上がるのを待つか、、、どうしよう」と逡巡したに違いない。しかしながら「約束通りに荷を着けなければならない」という念が道理を抑え込んで無理を通してしまったのだろう。
判断遅れがトラブルの根本になるのが常である。それはそうといえども、凍える山中の坂路で汗みずくになって作業している彼を責める気には到底なれなかった。

「できるだけ廉く早く」を否定はしない。
物流事業者や物流部門が「できますよ」と言えば、「それはたすかるなぁ」と荷主や営業部門は感謝の言葉とともに「じゃぁお願いします」と返すに決まっている。
順延が妥当な状況認識を皆が共有しているのに、なぜか物流現場だけが、
「うぁぁん、、っと、まぁ、、、ぅぅ、、ひとつやってみようじゃねぇか」
と、鼻をすすり上げながら前のめり気味に、、、圓生師匠じゃないんだから。
で、結構なトラブルやら運行不能となったりで、状況把握や代替便の手配やらでかえって手間がかかって大ごとになったり、、、はめずらしいハナシではない。

本稿掲載日は2月7日金曜日。はたしてどういう天候になっているのやら。
一日や二日ぐらい止めたり休んだりしても支障ないものが大半を占める物流業務。
計画休業・計画休配・計画延着、のような手配がアタリマエになるよう願うばかりだ。

無理して行くな。
無理して帰ってくるな。
三つの「とまる」を励行してほしいのであります。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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