物流業界において、運送業務は男性比率が高く、庫内業務は女性比率高し。
という今までのアタリマエが変わりつつあると言われ始めたのは平成半ばごろ。
現在では大型トラックから各種大型重機に至るまで、ドライバーやオペレーターの女性就業者数は増加の一途となっており、庫内業務の男性従業員数もまたしかりなのだ。
その傾向は少子高齢化による深刻な人手不足が「性別にこだわっている根拠も余裕もない」という切実な雇用需要を反映しているのだが、その反面…
――というハナシへと展げてゆきたかったわけではない。
どこの誰が何を生業にしようとかまわない。適性判定や業務評価に性別や年齢が先立つことを断固否定してきた身としては、喜ばしいや好ましい以前の「あたりまえ」でしかない。
ちなみに「LGBTQと物流業界」についても、過去にいくつかの原稿で述べ、セミナーで話してきたとおりだ。雇用側と就業者双方に偏見や過剰な身構えがなければ問題ない。
要は「仕事さえちゃんとしてくれるなら、年齢性別や外見や性的嗜好はどーでもよい。ただし就業時間内の決まりごとは、どこのどなた様であろうが鉄の掟として順守してもらう」
のように、単純明快な答えを出しているのでそれ以外は雑音でしかない…
――というハナシも今回は展げるつもりがない。
物流現場の高齢化と男女比率均衡化が進む昨今。
それと同じくして中高年従業員間の恋愛や結婚が増えているのだ。
統計的根拠のあるハナシではないが、肯ける場面や出来事がいくつか思い浮かぶし、実例の報告も少なからず、、、というわけで「物流現場が今アツイ~中高年の出会いの場」のようなレポートをどこかに載せようかと画策している次第だ。
生涯未婚率の上昇は男女の別なく止まる気配がない。さらには離婚率の上昇もあいまって単身世帯や母子・父子家庭の増加は今や就労や消費の基調測定に織り込まれているようだ。
つまり世帯別の消費分析や販売動向の測定時には必ずといってよいほどセグメントとして挙げられているのだから、その比率の大きさは言わずと知れる。
単身者同士の出会いが職場――は、今さら説明するまでもないことながら、恋愛から結婚や同居に至る切実な因果として単身世帯及び母子・父子家庭の経済的困窮が挙げられる。
赤裸々ながらも踏み込んで書けば、「一緒に住んだ方が生活が楽になるから」という打算が「結婚や同居した理由」の土台となっている事例は少なくないようだ。
実際に現場で聴きとってみたが、
「公租公課によって削られ続けている可処分所得を少しでも増やすためには、世帯収入の増額以外に手立てはない。世帯人数が倍になっても世帯支出は必ずしもそれに準じわけではない。合算効果による支出抑制が見込めるのだから、結果として世帯の可処分所得と必要経費の差額はプラス方向へ動くはずだ」
という主旨の説明をするスタッフの方々が大勢を占めていた。
相手を好ましいと思う感情の高まりがもたらす恋愛→結婚というモード切替ではあるものの、上記のような計算を恋愛中から始め、結婚へとハナシが進んでゆくパターンが多いようだ。
たとえ結婚に至らなくとも、同居によっても似たような効果は得られる。
少し前に書いた年収の壁モンダイについても、保守政権が安定すれば労働者は原則として所得税総課税・社会保険料総負担と移行してゆくことは必至。ならば世帯収入を増やし支出効率を上げることが対策としてはもっとも有効である、というのがワタクシなりの現実論なのだが、読者諸氏はいかがお考えなのだろうか。
今はまだ少ないが、遠からず住居付き倉庫や車庫が目立つようになってくるはず。
労働者の囲い込み合戦は時給以外の条件競争にもつれ込むに違いない。
ここでいう「住居付き」とは必ずしも敷地内を指しているのではなく、社宅完備という意味合いが強い。先例としては自動車期間工やその他製造業の福利厚生内容を参照いただきたい。
物流の場合、雇用条件に「期間」を設けるのか否かは事業者によって様々だろうが、夫婦や同居者世帯を募りたいなら期間あり募集は避けた方がよさそうだ。
選挙で政治や制度への〇×を投じることは欠かさずに行う。
かたやで自助努力の及ぶことにはためらいなく試算や試行してみる。
物流現場で出会い、恋愛しました。
そしてその先には「より良くなる」が待ち受けていました。
そんなふうに笑顔で語る人が増えることを願っている。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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