♪暑中ぅうお見舞い申し上げますぅ~ ……で、「キャンディーズかっ!」とツッコめる貴方はジイサンかバアサンか後期オッサンか後期オバハンである。
というハナシはどうでもよい。
やはり今年も豪雨と酷暑のまだら攻撃に翻弄されっぱなしの梅雨末期となっているではないかと憂うつこの上ないワタクシなのだ。ニュースなどでも繰り返し報じられているが、外水や内水の氾濫による洪水災害の復旧作業を35℃超の炎天下で行わねばならない――そんな泣きっ面を蜂が刺すような被災地も多いと聞く。
佐賀県の鳥栖一帯が浸水地域に含まれていたが、読者ご周知のとおり九州物流網のハブ機能を有する要衝である。拠点別の被災状況もさることながら、働き手個々の被災状況によっては、稼働に支障が出ることは避けられない。
おざなりで拙速甚だしい復旧計画や気概先行型の部分稼働は厳禁とすることは当然だが、他地域への代替手配や現実的な時間猶予を試算のうえ確保すべきだろう。
今回の北九州から山口・島根エリアでの豪雨災害でまたもや痛感したのは、その地域の気象統計になかった毎時降水量や連続降水時間に見舞われている点だ。毎年整備改訂してきたハザードマップの色分けを無視するかのような水害や地盤崩壊が発生したのは今回の豪雨災害に限った事例ではない。
近年激甚災害が起こるたびに「異常気候」という呼び名で、あたかも通常とは違う特異な気象条件扱いされてきたが、その言い回し自体が常套句化しているのは奇妙この上ない。
ラニーニャだろうがエルニーニョだろうが、国土の亜熱帯化が進むことに変わりなく、その上に地理的な「低気圧の墓場」とされてきた海洋条件が重なっているのだ。
目まぐるしく変化し、時として苛烈な気象条件となるのは、わが国が位置する緯度と経度によるものなので、改めて異常扱いする必要はないのだとか。
今までと違うことを異常と言い立てるのはもうやめませんか?というハナシである。
今まで物流業界の労務事情と適正化についてたくさん書いてきたが、その要点は「時間猶予」に尽きる。つまり業務完了までの所用時間に幅ができれば、時間当たりの必要人員も減じることができるので、省人効果に寄与するというものだ。
さらに付け加えたい要素は「この国の気象条件」であり、具体的には夏季や冬季の降雨降雪の激甚化だ。急激に発達して長期間居座る降水帯や暴風域が頻発して猛威を振るう国土では、最良の対処は「適切な避難と可能な限り動かないこと」であるのが現状だと認識している。
そのためには物流の所用時間を既存の約束事より猶予しておく必要がある。
事が起こるたびに慌てて時間割組み換えするばかりでは、もはや段取りとして稚拙とされても致し方ないし、少なくとも「明日届かない=物流分断である」という捉え方やそれを真に受けての報道は改めるべきだ。
「引当から到着までの標準(最短)時間は3営業日」
とするデファクト化推進行動を荷主も物流事業者も励行していただきたい。
医療や食料関連以外の物資輸送で「明日届かなければどえらいことになる」という品目は何なのか?私には即座に思い浮かばないのだが、翌日配達至上主義を掲げる事業者とて同じ応答になるはずだと思っている次第だ。
「明日届かないと困るのは誰じゃ?」という問いかけに「ワシじゃ!」と言い張る者はどこにいるのだろうか。実は皆「明日届かなくても別にかまわない。そりゃまぁ、はやいぶんにはありがたいけど…」ぐらいのハナシではないのか。
もしすべてのEC事業者が「来月から当日と翌日配達は購入額にかかわらず最低1000円の特別加算料金がかかります」とすれば、購入者の過半以上が無料もしくは廉価な翌々日以降の配送を選択するはずだと確信している。
サッカーやラグビーの戦術に倣い、オフサイドトラップのごとく乱れなく横並びラインをあげれば、配送労働力の不足や労務環境の整備は一気に改善方向に向かうこと必至だ。
もちろん消費者からは文句の百や二百ぐらいは出るに違いない。
「うちは送料無料です」と抜け駆けする輩が現れるに違いない。
物販する上で値段しか競争道具がないのだろうが、そんな売手は泡沫のごとく浮かんでは消えてゆくだけだと気付いてほしいもんだが、まぁ、気付かんだろうなぁ。
と、ここで愚痴っても仕方ないのだが。
暑中見舞も年賀状も送受止めて久しいが、日常のメールなどの枕や締めには必ず時候に見合う言葉を織り込むように心がけている。
しかしながら、昨今ではメール文などに本旨や用件以外の文字を並べるのは仕事のできない者と評されるだけでなく、読み手の時間を奪う不届き者とされることもあるのだ、と聞く。
なんとなく「明日届かないのは物流破綻」と同じ気配を感じてしまう。
という物言いも後期オッサンの愚痴でしかないのかもしれんが。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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