物流よもやま話 Blog

一方通行・高速物流の高架下で

カテゴリ: 実態

一方通行のみで完結する荷主企業の自社物流業務は稀有というより皆無に等しい。
広報されている斬新で画期的な仕組や方法論についても同じで、全体業務の一部を切り取って起承転結を表現していることが大勢を占める。
私の生業は「それ以外」と付記される業務の取捨と改善をサポートすることである。
斬新スキームが寄せてきたしわをのばしたり、サンドバッグのようにボコボコに打たれっぱなし状態のまま見て見ぬふりをされている業務などを、コツコツと根気強く是正することが主たる仕事なのだ。何よりもコスト効果が明確に出てくるだけでなく、業務簡素化による省人効果も見込める点が好ましいようだ。

ただし毎度上手くことが成るのかといえば、そんなわけはない。
苦戦することも多く、いつもヒッシのパッチでやっている。
もちろん「全部改革」の最初から係わることも少なくないが、その場合には全体最適を念頭に置いての業務フローの交通整理と路線再設置となる。新しい道路を通すことが必ずしも最善手とはならぬのは、都市開発を例に挙げるまでもなく、多くの事業会社に共通する事実だ。
仮にバイパス的な敷設工事を選択するにしても、側道や地下道の要所に視えないクサビのような知恵や工夫を欠かすことはない。

上述したように、多くの荷主企業の物流業務には、一方通行完結型のように視えてはいても、実際には暗渠(あんきょ)のような経路や迂回路に似た裏道が存在する。
それを悪者にしたり不合理と評価する前に、それぞれの経路の起点と業務が生まれた理由を第三者的視点で冷静に調査する必要がある。
〝事情〟や〝体質〟や〝特有〟などの説明は聴き取って書きならべておき、ミイラ捕りがミイラにならぬように留意しつつ事を進めるというのが基本。すなわち把握はしても必要以上に踏み込んだ理解や共感を内心に抱くのは厳禁なのだ。内部者の心情や事情を慮って理解納得したとたんに、冷静な判断評価が鈍るからだ。

物流の日常業務には情意や優柔は禁忌である。それは経理も同じだ。現在の事実を数字で表現・説明するのが物流や経理などの機能部門の第一義であり、その〝値〟を導く過程で恣意的であったり、情実にとらわれてはならない。
業務構築や改善の際のヒアリングも同様の心構えで臨むべきである。最終的に得るべき情報は「本当のこと」なのであって、現在の状況や今に至った理由ではない。
よく見聞きする「高速道路型業務バイパス」はその高架下に「本当のこと」を横たえたまま開通させていることが多い。高速道路ではなく下道しか使用できぬ仕事が依然存在しているし、やもすれば高速道路の開通によって従来からの下道は交通量が増え、渋滞や混乱の度合いが増したというのは特段珍しいハナシではない。

つまり区間限定高速のような一方通行業務は、時として総業務量の増加や補完手順の煩雑化を生み出す可能性が大いにあるということだ。ちなみにタラレバを書いているのではなく、いくつかの事実を思い浮かべつつ文字を打っている。
モンダイはどうやって身の丈に合った物流作法をまとわせるかであり、将来的な業務輪郭をいかに描くのかこそが注力すべき点なのだ。

カツオブシにしか見えないらしい最新システムや一石二鳥の仮面をかぶった業務複合化。その企業には時期尚早ゆえネコにコバンとなるにもかかわらず、その理由を経営層に説明する者がいない。ならば不肖ワタクシがと腕まくりして申し出てみるが、関係各位の幹部層がこぞって「そのうち折をみて我々が説明しますので」とやんわり断られたり。

高速道路を維持するための作業が高架下ではたくさん発生している。
地域には分不相応で、今すぐ必要とは思えない道路――そんな景色は国内各所にある。
物流業務に置き換えて一考する価値はあるはずだ。

 

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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