自社の物流がどうなればよいのか?
これを具体的に話す経営者・経営層は極めて少ない。
が、現場の社員やパート従業員さん達は断片的で対処策ながら、実に明瞭簡潔に即答することが多い。
問題意識が明確で改善後の適当な形が描けているのだろう。
そこだけを切り取ってあげつらうように比べているわけではないが、普段から物流業務の現状聴取や検証に割く時間を確保して欲しい。
経営者だけではなく経営層と事業部門の責任者諸氏に対して切望する。
経営者には理想を語る要がある。
最上位の方針として、理念を明文化して告知することは職責だ。
営業とは、
開発とは、
管理とは、
広報とは、
各社きちんと定義されているし、それぞれに信念を感じる言葉が並ぶ。
物流とは、
・・・・・・・・・・どっ、どこも書いてへんやないか。
なんでやねん!
事業戦略まで読み下りてもまだ出てこない。この中期経営計画のどのへんにあるのだ?
戦略上要らんのか?
いや、要るやろ、それは。
こういうときに、外部委託していると都合がよい。
「物流につきましては、委託会社様とのより緊密な連携と、顧客満足の価値を共有すること
によって、単なる協力会社という位置づけではなく、更に一歩踏み込んだパートナーとし
て一層の業務精度と品質の向上に努めて参る所存であります。」
といった感じか。
正論であるし、そのとおりだ。
しかしながら私が知りたいのは、その企業が物流についてどう考えているかだ。
委託先以前に、もし自社で行うとしたらトップは物流をどうしたいのか?
そもそも自社の物流機能は顧客に対して何を約束するのか。
その約束がもたらす果実は顧客にいかなる利益と利便をもたらすのか。
そのためにどのような施策を講じているのか。
建屋建築や協力会社との連携強化以前に、自社に必要な物流業務とその設計趣旨の具体案はいかなるものなのか。
それらの戦略と計画に必要な組織編成と人材育成の計画と進捗は可視化の下に共有されているのか。
物流の最終責任者は代表者であるのか。
顧客をはじめとする利害関係者に、上記の情報の概要が開示されているのか。
「物流方針の肝は委託先企業の最適な選定と、相互理解による強固なパートナーシップです」
よくあるコメントである。
中身の云々とその出来は、丸投げする相手次第というわけだろうか。
自社の顧客への最終サービスを、自ら語れない経営トップなどいるはずがない。
3PLなどへの丸投げ型外部委託であっても、庫内作業はすべて下請けが動かしている自社物流であっても。
委託は悪ではない。
依存が悪なのだ。
その混同や勘違いが少なくない。
少しの時間でよいからきちんと考えてみていただきたい。
「日本中の社長が自社の物流業務を週に3分間だけ思い浮かべて考える」
は、私のささやかな願いなのだ。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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