昨年末に冬用タイヤに交換して以来、湖北(滋賀県北部)や北陸への行楽が増えている。
スタッドレスを履くだけで楽しみが増えた。こんなことならもっと早く試みるべきだったと痛感している。美しく荘厳ともいえる銀世界の景観が展がる海沿いや山間の幹道を往くドライブは感嘆の声の連続となる。よくよく考えれば当然ながら、雪国の除雪対策は想像以上に徹底されているようで、大型の除雪車が主要道を適宜巡回する。
なので冬タイヤを装着して流れに乗った安全運転を心がければ、私のような雪道に不慣れなオッサンでも不安になったりすることはほとんどない。
東京都を含め関東地方では大雪警報が出ているようだが、関東以西の大都市は雪に弱い。
国を挙げての正式なアナウンスとして、気象変動の予測に応じての対応策を根底から見直した方がよさそうだという念が強まる一方だ。
あれやこれやと分析して、それらしい対処を謳う専門家は多いが、都心に雪が5㎝でも積もれば、昨日までの理路整然でもっともらしいハナシはどこかに消え去って、ニュースで報じられるのは歩行者の転倒や二輪車の横転、自動車の立ち往生や衝突事故などばかりだ。日本に限らず、大都市は一定以上の暴風雨や降雪に対してなすすべなく脆弱であり、唯一講じることが可能な策は「できる限りの機能を停止、休止して、極力動かない」ということぐらいしかない。
外出不要で過ごせるようにな備え、勤務日ならテレワークや有給で自宅滞在するのがロスや事故を最小化する最善策であるとしか思えない、、、のは私だけなのか?
関東地方の大雪(?)にしても、ちょっと騒ぎすぎな感が拭えない。全国ネットのニュースで大々的に報じ、注意を促さねばならぬほど「慣れぬ事態」ということなのか。
私の大学受験からその後の学生時代、卒業後まもなくの昭和天皇崩御から平成一桁あたりまでは、毎年のように年始から2月下旬にかけて、結構な頻度で積雪があった。私学の受験日がラッシュ状態の2月は10㎝を超える積雪に見舞われることも珍しくなかったと記憶しているし、入試の開始時間が1時間以上繰り延べになることも一種の風物として受け止められていた。
ちなみに私の母校受験日の朝もドカ雪だった。したがって試験開始時間は1時間遅れた。
今も変わらぬようだが、元号を二つ戻した当時から冬用タイヤの装着率が低い東京23区では、路上での立ち往生やスリップ事故が多発していた。歩行者の転倒事故もあちこちで発生していたので救急車の往来はひっきりなしだった。
あれから30年以上を経た今の時代でも、昭和の終わりに放送された「都心のドカ雪で大混乱」と似たような光景がテレビニュースやネット配信の画面に映し出されている。
つくづく思うのは、過去平均つまり「平年」とされている気象統計からはみ出す気象条件への対策は、世紀が変わり元号がいくつも更新された長い年月の間、個人生活にかかわる肝心な点でほとんど進んでいないということだ。
そもそも自然相手に何とかしようとすること自体が不遜で不明ではないのか?という気がしてならない。この数十年の自然災害とその被災地の様を並べてみれば、人間が自然の営みに対して抗ったり、何かを画策しても無駄であることが知れる。
逃げる・動かぬ、止める・休むを躊躇なく行うことが最善であることは、結果の検証をまともに受け止めれば当たり前となることだろう。
自然は美しい景観や豊かでありがたい恵みをもたらしてくれるが、その営みは時として人間にとって厳しく辛い苦しみとなることもある。
銀のパノラマをドライブしながら、そんな言葉がふと脳裏に過った。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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